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国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義

国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義

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要約

「読む力」「類推する力」「思考する力」を育てるための「国語力」を提唱する。

1.教科書で「読む力」を養う
読む力を養うには「中学・高校の教科書」が最適な教材。
教科書を活用し「要約と敷衍」「比較」「能動的読解」とステップを進めていく。

・要約と敷衍
まずは教科書を音読し内容を理解し、要約と敷衍のトレーニングを行う。
要約は重要な個所を抽出することで、敷衍は抽象的な観念を分かりやすく説明すること。単なる抜出ではなくポイントを見つけるのが大切。

・比較
複数の記述を組み合わせて多面的に考察する。
相違点と共通点を明確にするため、視点のレベルを揃えることが重要。

・能動的な読解
自ら「問い」を立ててみる。
疑問をもって自分事として捉えることで、より深く理解することができる。

2.古典を読んで類するする力を養う
古典的名著は読解力が必要だが、時間・空間を超えて類推する力を育てるのに最適な教材になる。

・読む力は「感化」によって身につく
具体的な「誰か」の影響を受けることが決定的に重要。
本の内容を深く取り入れる手法として「三回読み」を提唱。
1回目は通読し、重要箇所に傍線を引く。
2回目は重要な個所を枠で囲う。
3回目は知識として定着させたい部分を書き写す。

・宇野弘蔵「経済原論」を例にした読解
マルクス「資本論」を研究し、「マルクス主義」と「マルクスによる資本主義の分」を区別した「経済原論」を題材とする。
読みにくい文章を解釈する方法として「長い名詞句の主語述語への置き換え」や「敷衍と類推の読み取り方」といったテクニックを紹介する。

・メトリ「人間機械論」を例にした読解
唯物的な思想を持った医師メトリが18世紀に書いた「人間機械論」を、昨今のAI の受け取られ方とのアナロジーを見出しながら読む。

・ゲルナー「民族とナショナリズム」の読解
近代に生まれたナショナリズムの運動を通して「民族」が規定されたとする「民族とナショナリズム」を題材に文章の構造把握を解説する。

・小説から「社会の縮図」をみる
宮下奈都の「羊と鋼の森」とリチャード・バック「かもめのジョナサン」を題材に「類推する力」から社会・人間を理解しようとする例を示す。

3.「読む力」から「思考する力」を育てる
著者が高校・中学で行った特別講義の内容紹介を通して、「思考する力」の育て方を解説していく。

・アナロジー思考
メタファー(比喩)とアナロジー(類推)は、どちらも「類似性と差異性」の要素があるが、メタファーは差異を強調しインパクトを出す。
神学ではアナロジーを多用し、神という見えない存在を語っている。

・客観的な定義
文中で使う用語を客観的に定義する必要性を解説。
独自の定義を出発点にすると、議論全体の客観性が掛けてしまう。

・演繹的アプローチと帰納的アプローチ
定義から出発する演繹的なアプローチに対して、登場人物一人一人への考察から考えを進める帰納的なアプローチもあることを紹介。

・「事実」「認識」「評価」の区別
読み取るときも、考えるときも、「事実→認識→評価」 の段階を踏むべきであると説く。

感想

テキストとして取り上げた題材に著者の専門分野が多く、テキストの内容自体についての解説が熱い。

特に、マルクスの資本論の話や、ゲルナーの民族論の解説には熱が入っていて、それ自体が面白い。

共産主義を生み出した「マルクス主義」は成功しなかったが、彼の「資本主義の分析」は極めて優秀だった。
マルクスが資本主義の問題点を可視化したことが段階的な改革に繋がり、結果としては「資本主義の延命」に貢献したことになるのだろう。

ゲルナーは20世紀初頭のユダヤ人として「民族」というフィクションを研究した。
グローバル化がさらに進んだ現代に「民族」をどのように位置づけるか、AIなどが変えていく産業構造の中で「民族」がどのように影響するのか、「民族」を意識しにくい環境にいる日本人は、何に着目すべきなのか。
ここでも佐藤氏の持論が展開される。


佐藤氏の専門分野の解説が面白かった。「国語力養成」という当初の目的がかすんでしまうくらいに。。

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