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クリムゾンの迷宮

クリムゾンの迷宮

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あらすじ

藤木芳彦は赤い岩に囲まれた異様な場所で目覚めた。

ここに来るまでの記憶はなくなっていて、わずかな食料とゲーム機のような端末が手元にあった。
端末を起動すると「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された。無事に迷宮を抜け出て、ゴールを果たした者は、約束通りの額の賞金を勝ち取って、地球に帰還することができる」というメッセージが表示される。

第1チェックポイントに向かう途中で、大友藍と出会う。彼女と情報交換をしながら、ゲーム上でのパートナーとなった。

チェックポイントには、合計9名のゲーム参加者が集まっていた。
ゲームはゼロサムで勝者一人の総取りとなるため、最終的にはプレイヤー同士の争いとなることが予想される。まずは、各プレイヤーの端末に表示されたメッセージを交換し、戦略を立てていった。

それぞれの方向に「サバイバルツール」「護身ツール」「食料」「情報」が隠されているいうメッセージをみて、参加者は4方向に分かれて探索に向かい、やがて対立していった。

「情報」のルートを選んだ藤木たちは、飢えや渇き、野生動物や「食屍鬼」たちから逃れながら、チェックポイントを巡っていった。

途中で入手した「火星の迷宮」というゲームブックが、実際のゲームを模していることに気づき、ゲーム主催者の意図を読み取ろうとする。

感想

いわゆる「デスゲーム」もの。参加者同士が敵となるバトルロワイアル形式の脱出ゲームだ。
誰を信じればいいのか、ゲームマスターの意図を読みながら、メンバー間で交わされる頭脳戦がスリリング。
貴志祐介さんらしい「安定の後味の悪さ」もいい感じにハマっている。True-End がモヤっとしたままなのが、実に後味悪くていい。


こういう「騙し合いの頭脳ゲーム」に興奮する。どうも私は「嘘つき」が好きなようだ。

本書では「参加者同士の騙し合い」の上で、さらに「主催者の意図したルールをぶっちぎる」ところが実にいい。

「勝機は、狂気にあり」という。
常に合理的な行動のみを選択するプレイヤー、相手に見透かされてしまうような戦略は、必ず敗北する。

合理的な思考を尽くしたうえで「ルールを破る」ことで勝機が訪れる。
ゲームに勝てるのはルールを定めた胴元だけなら、そこから抜け出すにはルールを超えるしかないのだろう。

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