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准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと

准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと

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あらすじ

「人の嘘が分かる」ことで孤独になった大学生 深町尚哉 と、民俗学を研究する大学教授 高槻彰良が、都市伝説の謎に挑む。

  • 不幸の手紙と呪いの暗号

尚哉の友人である難波は、届いた「不幸の手紙」を無視してから、運の悪いことが続いた。目の前に植木鉢が落ちて着たり、駅の階段で突き落とされたり、鍵を無くし、エアコンは壊れ、電車事故で試験に遅れ、などなど。

難波は高槻に不幸の手紙の話をする。
高槻は「呪いは現象に対する解釈の問題だ」としながらも「難波本人がすでに呪いと解釈しているのであれば呪いは実在する」のだといい、呪いを外す「儀式」をおこなった。

高槻の運営している都市伝説情報サイト「隣のハナシ」に、「図書館のマリエさんの呪い」についての相談がきた。
相談者が通う中学校で「図書館で暗号が書かれた本をみたら『マリエさんお忘れください』と唱えるか、暗号を解かないと呪われてしまう」といううわさが流れているのだという。

高槻たちは、噂の発信源になった図書館を訪れ真相を探る。

  • 鬼を祀る家

高槻たちは、研究室学生の親が経営するペンションに遊びに来ていた。

高槻たちはペンション近くの「鬼の洞窟」に訪れた。そこには地元の鬼頭氏の祖先がかつて鬼の角をへし折って退治したという伝説の残る祠があった。

「鬼の洞窟」で肝試しをしていた小学生が「鬼の頭蓋骨」を発見した。居合わせた高槻たちは、それが人間の骨だと判断し警察に連絡した。

祠を守っていた 鬼頭家の当主は「よそ者」の乱入を快く思わず、高槻たちを冷たくあしらった。

高槻は「鬼の洞窟」に隠された歴史を追う。

  • extra それはかつての日の話

高槻と、彼の親友である刑事 佐々倉健司 との出会いの話。

小学1年生の頃、有名なプリマの息子だった高槻彰良はバレエを習わされていた。「可愛い」といわれることがイヤだった高槻は、佐々倉健司と友達になり、一緒に剣道を習い始める。

夏休みに入り、高倉と佐々倉は軽井沢の別荘に遊びに行く。二人は森の奥で斜面を転げ落ちてしまい、怪我をして道に迷ってしまった。

その時、白っぽいシャツを着た女の人が無言のまま導き、二人は森からでることができた。

感想

高槻は、怪奇現象を含め全てのことには「現象と解釈」の側面があるという。

例えば「偶然の電車事故で遅刻して、大切な商談がダメになった」という「現象」を「先日来ていた不幸の手紙を無視したからだ」と理由付けて「解釈」すれば、不幸の手紙の「呪い」は成立する。

人は「分からないものが怖い」から、無理やりにでも因果関係を見出そうとする。

妖怪、呪いや占いも、あるいは神様も「説明できない因果関係」を担うものだった。そこに「再現性のある因果関係」が「科学」として見出されて、「説明できない因果関係」が登場する範囲は狭まってきている。

実際「科学」が捉えている因果関係は最表層だけだし、人間スケールでの見方でしかない。それでも日常的に見えている部分では十分有効で、未来予測に役立つ。科学の力は偉大だ。

だが一方で「科学的」なことも、その切り取り方には恣意的な解釈が入っているのだし、そもそも「科学」にカバーできない膨大な領域がある。
「説明できない因果関係」は今でも必要だし、科学的でないから価値がないわけではない。主体的に意識的に「解釈」していくことが大事なのだろう。

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