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化物語(下)

「あれがデネブ。アルタイル。ベガ。有名な、夏の大三角ね」化物語(下)

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あらすじ

電子書籍版の「物語シリーズ」3冊目。
今回は学年首位の成績を維持する真面目な委員長 羽川翼 の「障り猫」の話。

高校3年に進学する春休みに、阿良々木が吸血鬼との事件で絶望していた時期に羽川に助けられた「恩がある」のだという。またゴールデンウィークの時期、羽川が「障り猫」に乗っ取られたときにも、阿良々木が関わっていた。
小説版は時系列通りに語られていないので、そのあたりのエピソードの詳細はこの時点では不明。

で、本作は6月の中旬の話。

阿良々木と文化祭の準備をしているとき、羽川は「阿良々木くんと付き合い始めてから、戦場ヶ原が悪い方向に変わってしまったという噂がある」と伝える。その後、羽川は頭痛を訴えて帰っていった。

阿良々木は戦場ヶ原にデートに誘われる。
阿良々木は、二人が付き合い始めた一カ月前から、何度デートに誘っても断られていたが、ついに戦場ヶ原からの誘われ浮足立つ。
戦場ヶ原が阿良々木を連れてきたのは、かつて家族と一緒に眺めた「星の見える空」だった。

ある朝、登校中の阿良々木は羽川からの呼び出しメールを受けて公園に出向く。頭痛がおさまった羽川の頭には「猫耳」が生えていた。

ゴールデンウィークには「障り猫」が羽川を乗っ取り、暴れまわっていた。その時は怪異の専門家忍野メメたちに助けられていたが、羽川自身にはその記憶はなかった。

羽川と阿良々木は、助けを求めて忍野の所に向かう。忍野は羽川から「障り猫」を引き出し話を聞いた。

羽川を救う力を持っている吸血鬼の忍 は姿を消していた。
ほとんど力を失ない遠く離れることはできないはずの忍だったが、阿良々木がどれだけ探しても見つけることはできなかった。

「障り猫」は阿良々木に「羽川が再び障り猫を呼び出した理由」を告げ、「吸血鬼を見つける以外の解決方法」もあるのだといった。

感想

今回は完全にラブコメ。

羽川翼がメインで、彼女の健気さに心打たれる。

だが、シリーズヒロインのポジション面目躍如、前半では戦場ヶ原のターンも用意されていた。
この、戦場ヶ原が阿良々木に「かつて家族と一緒にみた夜空」をみせるシーンが最高に感動的。

戦場ヶ原はいう。「これで、全部よ」と。

「勉強を教えてあげられること、可愛い後輩と、ぶっきらぼうなお父さん、それにこの星空。私が持っているのは、これくらいのもの。私が阿良々木くんにあげらるのは、これいくらいのもの。これくらいで、全部」

新興宗教にハマり離れていった母。仕事を失い経済的意に追い込まれた父。そして心を閉ざしてしまった戦場ヶ原ひたぎ。
多くのものを失い、それでも手元に残ったものを大切にしている彼女が、新しくできた「大切なもの」である阿良々木に、全てをみせて委ねようとする。

これは恋に落ちてしまう。反則だ。

その後の羽川ターンがかすんでしまうくらい、インパクトの強いシーンだった。

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