新本格魔法少女りすか
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あらすじ
10歳の小学生「供犠創貴」と、魔法少女「水倉りすか」の物語。
- 優しい魔法は使えない
創貴が電車を待っていると、4人の男女が吸い込まれるように線路に飛び降り電車に轢かれた。
互いに関係のない4人が同時に線路に落ちる不可解な事件だった。4人の後ろにいたのは創貴だけで、小学生の身体で大人4人を突き落とすことは不可能だった。
この事故が「魔法」によるものだと確信した創貴は、りすかに話をしに行く。
創貴と同い年10歳のりすかは「魔法の王国」長崎から来た「魔法少女」だった。彼女の魔法は「水属性」で「時間カテゴリ」の運命干渉系の能力だった。
圧倒的な魔法使いである父「水倉神檎」が、りすかの血液に「施呪」したため、魔法式を書くことも呪文詠唱することもなく能力を発動させることができる。
りすかの目的は「父を探し出す」ことだった。
事故現場に赴いた りすかと創貴は、現場に「風属性の魔法式」を見つける。この魔法式は発動のために近くで呪文を詠唱する必要があるものだった。
事件のとき、駅のホームで被害者の近くにいたのは創貴だけで、誰がどこから発動させたのか分からない。
りすかはある可能性に思い当たり、警察官である創貴の父を通して、とある人物との面談を願い出た。
- 影あるところに光あれ
創貴の同級生、在賀織絵が誘拐された。
一緒にいた妹は「怪しげな男」と会ったとき金縛りのように体が動かなくなったのだと証言した。
りすかは、「犯人なのが影谷蛇之なの」だという。
影谷は「光属性・物体操作系」の魔法使いだ。魔法陣を仕込んだ矢で影を刺すと、影の主が動けなくなる。矢の力を使って少女を誘拐し、動けないまま衰弱していくのを眺めるのが好きな「赤豚紳士」だった。
りすかの時間操作系の魔法は、影谷の能力と相性は悪い。
だが創貴がいくつかの作戦を練り上げ、影谷の所に乗り込んでいった。
- 不幸中の幸い
影谷の事件解決のときに「創貴がしたこと」を許せず、りすかは彼と衝突した。
りすかの従兄の水倉破記が仲裁に入る。破記は「りすかを長崎に連れて帰る」というが創貴は認めることができなかった。
破記の「水属性・運命干渉系」魔法をかけられた創貴に、大小の「不幸」が訪れる。ほどけた靴ひもを踏んで転んだり、トラックにひかれそうになったり。
次々と襲い掛かる「不幸」をかわすことができないまま、創貴は破記を追跡していった。
感想
『ジョジョ』のスタンドや『Hunter×Hunter』の念能力のような「能力バトル」にミステリ風味を混ぜたような話だ。
とにかくバトル部分が爽快で面白い。
「力対力」の戦いではなく相手の能力との相性を考える「頭脳戦」の要素が強い。魔法を使えない創貴が「『魔法使い』使い」としてスタンド使い的な戦い方をする。
魔法も独創的で面白い。
りすかの「時間を省略する能力」も独特だし、「影縫い」攻略も面白かったが、水倉破記の「運命操作」の発想力がすごい。
りすかに仕組まれた「死後の念」が、17年の成長を先食いして、無敵の「りすかさん」状態になるのも、能力バトルの王道っぽくていい。
一方で創貴の小学生っぽくない醒めたキャラクタは魅力が薄い。
「ゴン」を彷彿とさせるようなサイコパスっぷりは、「異能の者」感を出してはいるんだけれど。
りすかの「主語と述語が入れ替わった」無理やりっぽい「独特な口調」は何だかクセになる。「ありがたいのはキズタカだね」みたいな。
これも先々なんかのミスリードに使われるのだろうか。
とにかく西尾維新さんの「暴力的なまでの世界構築力」に圧倒された作品だった。