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倒錯のロンド

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あらすじ

作家志望の山本安雄は、月間推理新人賞への投稿作品を書いていた。
ずっと1ページも書くことができなかったが、直前になって驚異的なペースで執筆し、「幻の女」を仕上げた。

山本は友人の城戸明に「幻の女」を読ませ。城戸は「作品の内容は素晴らしいが、字が汚くて読みにくい」と評し、作品のワープロ清書を請け負った。

ところが、城戸は清書した書類とデータを電車の中に忘れてしまう。
残り期間僅かで、データも原稿も無くなってしまい山本は途方に暮れた。

永島一郎は電車の中で「幻の女」の原稿とデータを拾った。
最初は素直に届けようとしたが、中身を確認すると、作品のレベルと賞金額の高さに驚かされる。会社を辞め無職となっていた永島には魅力的で「自分の作品として投稿したい」という悪魔のささやきが生まれた。

永島は本当の作者を殺すことを計画した。
城戸が作者だと勘違いした永島は、彼に原稿の「身代金」を払うよう脅し、その受け渡しの際に自殺に見せかけ殺害した。
身代金も奪って気が大きくなった永島は夜の街に繰り出し豪遊する。そこで女から提案された「白鳥翔」というペンネームを使い、作品を投稿した。

その頃、山本は締め切りまでのわずかな日数で、「幻の女」をもう一度書き上げた。連絡のつかなくなった城戸を心配し様子を見に行くと、彼が殺されているところを発見した。

慌てて現場から逃げた山本は、城戸の殺害容疑で警察に勾留されてしまう。
新人賞締切りギリギリで容疑が晴れ解放されたため、自宅に原稿を取りに向かった。

だが永島が本当の作者が山本であることに気づき、山本の部屋に忍び込んで原稿を探していた。

部屋に戻った山本は永島と鉢合わせ、殴られて意識を失ってしまう。
気がついた山本は、締め切り直前に郵便局に原稿を持ち込んだが、その直後、再び意識を無くしてしまった。


翌年、「幻の女」が月間推理新人賞を受賞した。
作者は白鳥翔で受賞コメントも残していた。内容は山本が書いた作品と全く同じものだった。

山本は作品を盗み、友人の城戸を殺した相手への復讐を誓う。

山本は月間推理の編集部に「幻の女」が盗作であると訴えたが、相手にされなかった。

白鳥の住むマンションでビラをまいたり、婚約者の広美に盗作疑念を持たせたりして、少しずつ相手の精神を削っていく。

広美は白鳥が書いた原稿が異常であることに気づき、「幻の女」が盗作だったと確信する。
白鳥の部屋から逃げ出した彼女は、山本からの連絡を受け彼が自宅に来るのを受け入れた。

広美は城戸と同じ状況で殺される。
後から部屋に来た白鳥に殺人容疑が掛けられた。
白鳥に恨みを持っていた山本にも嫌疑がかかったが、完璧なアリバイがあったため、すぐに解放された。

最終章で、真相が明かされる。

感想

盗作が連鎖し、倒錯が連鎖する。
全ての仕掛けがみえた後『倒錯のロンド』というタイトルの秀逸さに舌を巻く。

あらすじもネタバレも見ず、予備知識なしで読むのが幸せな作品。
余計な感想は書かないでおこう。

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