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冤罪者

冤罪者

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あらすじ

五十嵐友也は「中野区連続婦女暴行殺人事件」を追っていた。
ノンフィクションライターとして事件のルポが認められ、将来の展望が開け始めていった。

そのころ、五十嵐と小谷ミカと名乗る女性の交流が始まった。
最初は小谷からの「間違い電話」がきっかけで、読んだミステリの感想などを語り合うだけだったが、徐々に、電話越しのプラトニックな愛情が育っていった。

五十嵐は水沢舞と婚約する。
連続婦女暴行殺人事件を追い続ける五十嵐は、担当編集の水沢舞と一緒に取材を進めるうち、二人の関係は深まっていった。五十嵐が小谷に婚約を伝えると、彼女は醒めた声で「おめでとう」という。

河原輝男が連続殺人事件の容疑者の一人だった。
彼は窃盗や婦女暴行を繰り返している経歴があり、事件現場の近くで目撃され事情聴取されていた。五十嵐が舞と一緒に、河原のアパートを見に行ったときにあは、すれちがった彼からの濁った視線を感じた。

水沢舞が殺される。
それまでの連続殺人と同じく、暴行し殺害された後、身体に石油をかけられ燃やされていた。

警察は、河原への容疑を強める。
水沢舞の殺害について決定的な証拠はなかったため、別件の窃盗容疑で逮捕して拘留し、期限が切れるとまた別件での逮捕勾留を繰り返した。
河原は「事件当日、居酒屋で隣り合わせた女性と意気投合し、ラブホテルにいた」とアリバイを主張したが、その女性は見つからず、アリバイが証明されることはなかった。

河原に無期懲役の判決が下りた。
3ヶ月近い勾留の後に、自白を強要されて起訴されていた。10年以上にわたる刑務所での生活に疲れる河原だったが、別件逮捕による長期勾留が「代用監獄」になっていることを問題視した人権団体の支援を受け、控訴審を戦う。
また、森山郁江という女性は獄中の彼を支え、やがて獄中結婚をした。

その頃、五十嵐は栃本久美子と結婚した。
久美子は出版社でバイトとして働いていて、水沢舞がいなくなった五十嵐の穴を埋めるように入り込み、結婚に至った。久美子と結婚を機に小谷ミカとの電話は途絶えたが、しばらくしてからメールでの交流が再開した。

五十嵐は獄中の河原から、冤罪を訴える手紙を受け取った。
婚約者を殺された怒りから、最初は冷静に受け止められなかった五十嵐だが、刑務所で河原と面会し印象が変わっていく。「もし彼が犯人でないなら、真犯人野に放たれている」ことに危機感をおぼえ、中立的な立場で事件に関する記事を載せた。

五十嵐の記事に反応があった。
事件当時は当時12歳だった男性が、匿名の手紙で、水沢舞の殺害現場付近で犯人を目撃したのだと伝えてきた。彼は犯人が使った凶器のありかを教える。そこには河原と異なる人間の指紋が残っていた。

河原は控訴審で無罪を勝ち取った。
人権団体の支援を受けながら、獄中結婚した郁江との生活が始まる。

連続殺人の「被害者の会」は、控訴審判決に不服だった。
河原が犯人だと信じる「被害者の会」メンバーは、彼がいつか尻尾を出すと考え、彼の行動を監視してWEBに情報をあげていく。河原は常に監視の目を感じ、ストレスを溜めていった。

妻の郁江の心も、河原から離れていった。
冤罪を受けた不幸なヒーローの虚像が剥がれ、現実の姿を表した河原の粗暴さに幻滅していく。

郁江が姿を消した。
河原との関係が悪化したあと、無断で会社を欠勤し、ずっと彼女の姿がみえな区なった。

元刑事が殺された。
かつて河原を逮捕し、今は退官している元刑事が、河原が妻を殺したと考え、彼の家に乗り込む。だが、刑事は河原の部屋で何者かに襲撃され殺されてしまう。

部屋に戻った河原は、刑事の死体を見て「誰かが再び自分を嵌めようとしている」と考えた。警察に追われ河原は姿を消した。

数日後、河原の妻郁恵は、家に戻ってきた。
落ち着き先を探すまで、一晩だけのつもりで家で眠っていると、何者かに襲われ殺されてしまう。現場に残された精液が河原のものだったため、警察はこれも彼の犯行だと考えた。

同じころ、五十嵐の妻、久美子も何者かに襲われた。
軽傷で済んだが数日間の入院となる。五十嵐の心は既に久美子から離れていた。やがて彼女方から離婚を切り出した。

殺された水沢舞の妹、水沢みどりが上京してきた。
水沢みどりは「被害者の会」の支援を受けて、保母の職を見つけ、東京での暮らしを始める。五十嵐都は徐々に彼女との交流を深めていった。

次はみどりが狙われる。
みどりの部屋にいた「被害者の会」メンバーの女性が、彼と間違われ襲われた。一命はとりとめたが意識不明の重体に陥る。その事件現場にも河原の精液が残されていたため、警察はこれも河原の犯行だと判断した。

五十嵐の元に小谷ミカからメールが届く。
彼女は五十嵐に「たすけて」と伝えた。だが彼女の居場所は分からない。河原の行方が知れず、危険が迫っている中、五十嵐は小谷ミカの居場所を推理した。

そして、全てが裏返る。

感想

「叙述トリック名手」折原一さんの作品なので、最初から「そのつもり」で読む。時系列は書かれている通りなのか、人物の同一性は間違い無いのか。
緊張して読むので、この長さと登場人物の多さには疲れてしまった。。

本書のタイトルは、日本語で「冤罪者」、英語で「STALKERS(ストーカー)」となっている。

ストーリー展開を凝縮したのが「ストーカー」で、読者に投げかけられたテーマが「冤罪」なのだと思う。

一面では、叙述トリック前提の「誰もが怪しく見える」世界観で、犯人がストーカー的に不気味に迫ってくる恐ろしさが描かれる作品だ。

そしてもう一面で「冤罪」の問題を提起している。

検挙率を上げることが評価対象になる警察の仕組みでは、別件逮捕で長期勾留される「代用監獄」で、自白の強要を避けることはできない。
かといって「疑わしきは罰せず」を徹底するだけでは、確信的は犯罪には対応できない。

両方のパターンを示すことで、そのバランスの難しさを炙り出し、読者に考えさせる作品でもあった。

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