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残業バケーション/運命の人はどこですか?

残業バケーション/運命の人はどこですか?

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あらすじ

恋愛アンソロジー「運命の人はどこですか?」から切り出された作品。

菓子メーカーの企画室で働く川俣歩は、同期入社の種田一郎と一緒に残業していた。

作業の途中、二人が小学生の頃に観たドラマ『その時、ハートは盗まれた』の話で盛り上がる。二人は「フジテレビドラマ史上最高傑作」だと評していた。

円盤化されておらず映像が入手できないと嘆く歩に、種田はノベライズ版の小説を貸し、二人は更に親密になっていった。

種田が、ドラマのビデオを持っていた「元カノのお姉さん」に会いに行こうとすることに、歩は微妙な嫌悪感を覚える。

歩も小学生時代の友達がビデオを持っていたことを思い出した。連絡先が分からなかったが、種田の勧めでFacebookを使い始め、何とかビデオを借りることができた。

二人は、歩の部屋で一緒にビデオをみる。

感想

大人の夏休みは、自分から動かない限り、作り出せない。

「仕事が忙しくてバケーションなんて取れない」と思っていても、都会の中にだって夏気分を味わえるプールがたくさんある。
「SNSって面倒くさそう」と思っていても、使ってみると昔の友達と繋がれたり、いろいろとメリットはある。

「やらない理由」で固まっていた歩と、その背中をそっと押す種田くん。

「全てが整わないと動けなかった」歩が、掃除もしてない汚いままの部屋に種田を招いたシーンは、ある意味カッコよかったりする。
で、「謙遜じゃなかったんだ。本当に汚いですね!」という種田もまたカッコいい。


作者の「90年代ドラマ好き」もなかなかの熱量だ。
今ではネットにメディアの主流が移り「流行のドラマの話」で盛り上がることも無くなっているから、当時の話にノスタルジーを感じる人もいるのだろう。

でもまあ、メディアの変遷を嘆いても仕方ない。
使い勝手のいいところにお金が集まるし、お金のある所に活気が生まれ才能が集まる。今のネットメディアは、経済規模でいえば当時のテレビ以上の存在になっているのだし、その世界に乗っかって楽しめばいい。

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