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七回死んだ男

七回死んだ男

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あらすじ

大庭久太郎は、ランダムなある日に1日を9回繰り返す「反復落とし穴」にハマってしまう体質だった。
偶然入学試験の日にはまって好結果を残したり、良い結果に繋がることもあるが、ランダムに発生するのでほぼ役立てることができなかった。

久太郎の祖父、渕上零治郎はかつて破産寸前に追い込まれたが、今では外食チェーンの社長として大成していた。

零治郎は、毎年元旦に親戚を集め新年会を行い、財産と事業を相続する相手を遺言状に残していた。

その年も1月1日は親戚一同で集まり新年会が行われた。零治郎の娘家族たちは相続をかけお互いに牽制し合う緊迫した雰囲気を醸し出していた。

1月2日、久太郎は零治郎に誘われ、2人で酒盛りをした。
久太郎はまだ高校生だったが、祖父に飲まされ深酔いしてしまう。車で家に帰る途中、爆睡して意識を失ってしまう。

家に戻っているはずの久太郎が目覚めた時、そこはまだ零治郎の家だった。前日と全く同じ会話が繰り返され「反復落とし穴」にはまったのだと気づいた。

2周目の1月2日、零治郎が殺害された。
久太郎は1周目に悪酔いした久太郎は酒盛りを避けるため、零治郎から逃げていた。本来は1周目と同じ結果が起こるはずの2周目で大きく異なる結果が生じたことに久太郎は動揺していた。

3周目から、久太郎は犯人と思われる相手を足止めする作戦を取った。
だが、ある人を足止めすると他の人が犯人となり、どうしても零治郎は殺されてしまう。
8周目には、何事も起きなかった1周目と同じように、酒盛りに付き合ったが、それでも零治郎は死んでしまった。

最後のチャンスとなる9周目、久太郎は全く異なるアプローチを取った。

9周が過ぎ「反復落とし穴」を抜け出した久太郎は「大きな勘違い」に気づくことになる。

感想

超能力や霊能力など、オカルト要素は「論理」の邪魔をする。
テレポーテーションのある世界で「密室トリック」は意味がなくなるし、「呪い殺す」ことができるなら、凶器もアリバイもパズルのピースにならない。

だが本書では「オカルト要素の条件を細かく設定」することで「オカルトと本格ミステリ」を両立させている。

「一見オカルトに見えるものを、論理的に解釈していく」タイプのミステリも面白いが、オカルトを認めた上で論理を構築していく「特殊状況ミステリ」もやっぱり面白い。特殊状況だからこその新鮮な仕掛けもあるのだ。

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