仮想空間シフト
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要約
- 仮想空間シフトがもたらす変化
コロナ以降「仮想化」が進んでいく世界は、どうなっていくのか、そこで成長するために、どういう心構えが必要なのかを語る対談集。
コロナにより強制的に「オンライン・仮想空間」に進出させられている。
2019年まで、東京で在宅ワークを導入しているのは2割に満たなかったのが、現在では6割に達している。キャズムと呼ばれる30%を超え、すでに「元には戻れない」レベルにたっしている。
まずは仕事のやり方が変わり、次に人間と社会が変化し、やがては人の人生そのものを変えていく。
仮想世界を活用し仕事のスタイルを変えていく人がいる。
時間の使い方を効率化し、対面以上のスピードで成果を上げていく働き方や、働く場所の限定から解かれ、海外やリゾート地で働きながら、必要な時にだけプロジェクトベースで集まる働き方も出てきている。
住宅エリアの一極集中が緩和される可能性があるし、「仕事はリゾート地で行い、週末に食事をしたいから都会で集まる」というようなオンとオフの逆転も起こりうる。
本来は労働力も市場原理で流動するのが合理的だが、マッチングに際しての「取引きコスト」が大きいため、結果的に大企業が生まれた。
1から10までを自社で賄う大企業や、そこで決められた給料を一生受け取り続けるという会社員の存在は一種の「フィクション」だといえる。
だがここでもAPIやAIの技術でマッチングの取引きコストが下がりつつあり、プロジェクトベースでのつながりを都度作り上げることができるようになってきている。
大企業に勤めることが安定ではなく、より多くの繋がりを持つことが安全につながるようになる。
例えば「スプラトゥーン」では、近いレベル同士がマッチングされ5分毎に切り替わる。こういう遊びから、誰もが得意な部分を生かしリーダーになったりフォロワーになったりと、立場を変え役割を変えることが自然に身についている。
仕事を「監督する」コストは仮想空間の方がかかる。「業務の面白さ」で人を惹きつけることが重要になってくる。
「仮想世界」で生きるためには複数のアイデンティティを持つことが必要になる。リスク分散のためにも様々なコミュニティに分散するポートフォリオを持つべき。
テクノロジーへの対応で世代間の分断が生じている。
社会の仕組みを作る50代~60代が変化を望んでいない。だがコロナの影響で強制的に仮想空間シフトが進んでいることもあり、その下のデジタルネイティブの世代が積極的に社会構築に参加する必要がある。
- これからの世界を生き抜く10のアクション
①境界領域を作る
仮想空間で快適に仕事をするため、アイデンティティを切り替える仕組みを持つ。
②ナメ過ぎず、ビビりすぎない
仮想空間では「偶然人と知り合う」機会は減る。意識してカジュアルなつながりを作る必要がある。「無目的に大勢が集う」領域を大切にする。
③アジェンダを設定する
一方で、目的を持った会議では無駄な時間を削ぎ落し徹底的に生産性を上げる。
④仕事に意味合いを作る
「意味を掲げられる人」に資源が集まる。
⑤共感できる人と組む
仮想空間では監督コストが上がり「その仕事を面白いと感じていない人」と組むとパフォーマンスが下がる。同じ美学を持ち共感できる人と組むべき。
⑥ライスワークとライフワーク
やりたいと思えるライフワークと、食べるためのライスワークを組み合わせバランスを取る。
⑦問題提起に敏感になる
デジタル世界は「問題解決」にはむいているが「問題提起」には向かない。
検索ボックスに入れる言葉は自分で考えなければならない。
⑧問題にきちんと向き合う
問題に対し熱量をもって取り組むことで人が集まる。
⑨階段のステップを小さくする
コロナは強制的な変化をもたらしたが、急激な変化には抵抗がある。「小さな変化でいい」と思うことでむしろ行動力が高まる。
⑩変化を前向きに受け入れよう
変化は不安かもしれないが「上手く乗りこなしあ人は、とてつもない勢いで成長する」と捉えよう。
感想
面白い着想や独特な洞察が散りばめられた内容だ。
コロナの影響で働き方はずいぶん変わった。
「仮想空間」で働くための仕組みはずいぶん昔からあったが「切替コスト」が高く使われてこなかった。
「今までと同じパフォーマンスが得られるなら乗り換えてもいい」という人もいるが、一部不便になってもそれをカバーして余りあるメリットがあっても変化を認めないのは頑迷でしかない。
そこを「強制的」に変えることで一気にキャズムをこえた。
企業側はパフォーマンスが落ちないこと、コストが下がることを実感しただろう。今後も流れは止められないと思う。
働く側としては、短期的には「今までより忙しくなった」と感じている。気軽にミーティングができる分、無意味な打ち合わせも頻発しているが、もう少しこなれてくれば、効率化していくと思える。
また長期的には、住宅環境の見直しなど、生きていく環境にも影響し、社会全体に皿に大きなインパクトを及ぼすのだろう。
個人的には「仕事関係」であれば、直接の対面はほとんど必要ないと感じている。プライベートでは実際に顔を見て直接話すことは不可欠だと思うけれど。
仮想空間シフトの流れを後押ししていきたい。