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死体埋め部の悔恨と青春

死体埋め部の悔恨と青春

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あらすじ

青春時代を「死体埋め部」に費やす、二人の男子大学生の友情の物語。

  • 死体埋め部と指折りフェティシズム

大学入学直後の祝部は、帰り道に見知らぬ男に襲われ、反撃し相手を殺してしまった。

死体を前に呆然としている祝部に
「助けてやろうか?」と、声をかける男がいた。

その男 織賀は、遺体をジャガーのトランクに乗せ、祝部と一緒に山奥に向かう。
彼は「死体埋め部」を自称していた。

車の中には、もう一つの死体があった。
30歳ほどの女性の死体は「左手の指だけが折れていた」

死体を捨てにいく山までの道中、織賀は祝部に「推理クイズ」を仕掛ける。
彼女の左手の指が折れていたのはどうしてか。

祝部の質問に、織賀が一つずつ答える「ウミガメのスープ」形式で推理が進んで行った。

  • 死体埋め部と悪夢のディレッタンティズム

自分が殺した死体を埋めた事実に、倫理観を苛まれていた祝部だったが、強引に「死体埋め部」の副部長として入部させられてしまう。

死体埋め部の次の仕事も、30歳前後の女性の死体処理だった。
真面目そうに見える女性は、カバンに5冊もの辞書を入れいていた。その中で広辞苑はページが数カ所まとめて切り取られていた。

ページの切り取られた辞書を何冊も持ち歩いていた彼女は、何をしようとしていたのか。
織賀と祈部の「推理クイズ」が再び始まる。

  • 死体埋め部と恋するエウヘメリズム

祝部は、同じ授業を取っている移川加奈と親しくなっていった。
偶然通りすがった織賀も、卒なく移川に声をかけていた。

とある週末、織賀が「死体埋め部」の活動として、ジャガーの後部座席に乗せていたのは、移川加奈だった。

祝部は、友人を失った悲しみにくれた。
だが彼女が、ワンピースの下にスクール水着を着ていたことに気づき、実際には何が起こったのかを知ろうと、推理をしていった。

  • 死体埋め部の栄光と崩壊

祝部は織賀に「助けられて」きた。

出会った日には、死体の前で途方に暮れていた祝部を救い、大学生活も彼に導かれ、順調に進んでいった。

だが「死体埋め部」のルールを理解していった祝部は、二人の出会いの不自然さに気づく。

祈部は織賀をドライブに誘い、映画を見て、カフェで食事をし、いつも死体を埋めている「オリガマウンテン」に向かった。

感想

斜線堂有紀さんの作品は、「善悪のライン」もしくは「善悪判断の軸」を、少しずつずらしてくる。

『恋に至る病』『私が大好きな小説家を殺すまで』など、主人公は、客観的に見れば、ブッ飛んだサイコパスなのに、「その人なりの軸」が明確だから、なんだか普通に見えてきてしまう。

自分の「まともさ」が揺さぶられるような感覚だ。
ちょっと危ういかもしれない。

「完全犯罪」というのは、「犯罪があったこと自体が発覚しない」ことが条件なのだとわかってきた。
殺し屋よりも「死体埋め屋」の方が需要が高そうだ。
そういう機会があったら「死体処理の方法」に何より気を使うことにしよう。

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