BookLetでは、ビジネス書や小説の1000文字程度のオリジナルレビューを掲載しています。

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

こちらで購入可能

あらすじ

高校生の山下あかりは、アイドルグループ「まざま座」のメンバー上野真幸を推していた。

推しのSNSなどをチェックして、あかり自身もブログで情報発信する。バイトで稼いだお金も、ほとんどをライブやCDに費やしていた。

「いくつか病名がつく」程度の適応障害を抱えていて、学校生活やバイトでも苦労をしていた。それでも「真幸推し」が、あかりの生活を支えていた。

「推しが女性を殴った」というニュースが流れた。
彼を批判するアンチが溢れ、SNSは炎上していく。それでももちろん、あかりは真幸推しを止めず、ファンたちへの情報発信をつづけていた。
だが、あかりたちの奮闘虚しく、グループ内選挙では最下位に落ちてしまう。

真幸はライブ配信で、まざま座の解散と自身の芸能界引退を告げた。

あかりは、ネットで特定されていた推しの住所に向かう。彼の部屋で洗濯物を抱える女性をみて「推しは人になった」と悟る。

自分への破壊衝動が湧き上ったあかりは、綿棒の入ったプラスチックケースを、叩きつけるように投げ捨てた。

感想

あかり一人称での文章が、なだれ込んでくる様なとっ散らかり方だ。

この整理のなさでADHD的な適応障害の内面を表現しているのかとも思ったが、自分を振り返っても、考え事をしているときは、大体これくらいのとっ散らかり方だった。そういえば。
居酒屋バイトでの混乱っぷりも、学校でのコミュニケーションの苦労も「普通じゃん」という感じ。

なるほど自分も「整理できてない人」な訳だ。

一方で、あかりがSNSなどで外部に発信する文章は、整理されていて読みやすい。「対象への熱意」と「落ち着いて考える時間」があれば、粘り強く集中してまとまった成果を出すこともできる。

私にとって、あかりは「すごく普通の人」だった。

こちらで購入可能