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有頂天家族 二代目の帰朝

面白きことは良きことなり『有頂天家族 二代目の帰朝』

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森見登美彦さんの描く京都は幻術の渦巻く魔都だ。

幻想的な雰囲気が「現実から薄壁一枚で隔てられてしまったような感覚」を引き起こす。知らない街で迷子になったような不安と寂しさを、同時に知らない街を歩くワクワク感も感じさせる。

この『有頂天家族』シリーズは狸が主人公の「ほのぼのファンタジー」的設定で、展開も「ドタバタコメディ」なのに、やっぱり寂寥感が前面に出てくる。

森見登美彦マジックですね。癖になる。

あらすじ

京都に暮らす狸、下鴨家三男の下鴨矢三郎が主人公。
父である総一郎の「阿呆」を受け継ぎ「面白きことは良きこと」という思いを抱いて、日々楽しく生きていた。

父の総一郎はかつて京都狸会の頭領たる「偽右衛門」だったが、狸鍋として食べられてしまった。

謹厳実直で優秀な長男の矢一郎、蛙の姿から元に戻れず井戸に引きこもっている次男の矢二郎、純粋無垢で科学技術の才能を持つ四男の矢四郎の4人兄弟は、それでも力強く日々を生きている。


矢三郎は恩師である天狗の赤玉先生の元に通い世話を焼いていた。

赤玉先生はかつて如意ヶ嶽を治める大天狗だったが、現在は落ちぶれてボロアパートの一室で暮らす。海外に行ってしまった愛弟子弁天の帰りを待ちわびながら自堕落な日々を送っていた。


ある日突然、赤玉先生の元弟子だった「二代目」が京都に戻ってきた。100年ぶりの帰朝だった。

二代目は赤玉先生と反目して日本を離れ長らく英国で暮らしていた。京都に戻っても「天狗になる気もなく、赤玉先生の跡を継ぐ気はない」というが、かつての師匠を凌ぐほどの神通力を持っていた。

その頃、京都狸会では次の「偽右衛門」を決める選挙が行われていた。

先代の偽右衛門だった総一郎が狸鍋となり、現在の偽右衛門となった平八郎は早くその立場を退きたいと考えていた。

次の偽右衛門の座を狙っていた夷川早雲は、そのために総一郎を陥れたことが公となって狸会をおわれ、京都から失踪していた。

結局次の偽右衛門は 矢一郎になると目されていた。だが、偽右衛門就任を承認する天狗が不在で選挙が成立しない。前回その任を負った赤玉先生はその任を受け入れてくれず、矢三郎は「二代目」に話を持ちかける。

その頃、失踪していた早雲は、狸鍋を愛好する「金曜倶楽部」の人間たちと接触し、偽右衛門選挙をひっくり返そうと謀略を練っていた。

狸・天狗・人間が入り乱れての戦いが始まる。

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