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依存

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あらすじ

タック(匠千暁)、タカチ(高瀬千帆)、ウサコ(羽迫由起子)、ボアン(辺見祐輔)たちのミステリシリーズ。今回はウサコがメインの語り手。

タックたちは、大学同期ルルちゃんの誕生日を祝うため集まる。そこで出会った「白井教授の妻」は、タックの生みの母美也子だった。タックは、双子の兄 千治がかつて美也子に殺されたのだと、衝撃の過去を告白する。

ボアンたちが、純粋論理的に過去のエピソードの謎を解き明かしていくパートと、タックと美也子との確執を描くパートが、交互に挟まれながら、物語は進んでいく。


ルルの住むマンションで事件が起きていた。
ルルがゴミ出しに行くとき、通用口に小石が置かれ、オートロックが掛からないようにされていた。最初は、鍵を持っていくのが面倒な住人の仕業だと思われていた。だが、同時期に住人を装ってインターホンで鍵を開けさせるケースが多発したこと、ルルが鍵を紛失し、翌日見つかったという出来事から、その背後で何かが起きていることが疑われた。
ボアンたちは白井教授宅に向かう車の中で推理を戦わせる。

カノちゃんと同棲相手の雁住の衝突。
タックたちの同期であるカノが雁住から逃げ、ボアンの部屋に退避する。一時的にルルの家に同居させてもらうことを考えていた。
雁住はボアンの家にやってきて、強引にカノちゃんを連れ戻そうとした。

ボアンの小学生の頃の話。
学校の友人と一緒に老婆の幽霊を見たのだという。その老婆はすでに死んでいたはずであることを「誰か」に聞かされていた。
ボアンは、いつ、誰から、その話を聞いていたのか、塗り替えられていた過去の記憶を取り戻す。

タックが子供の頃の話。
近所の未亡人は飼い犬を虐待していた。全く世話をせず、見かねた隣人が餌をあげたりしていた。それなのに、犬が死んだ時、未亡人は再び別の犬を飼い始めた。未亡人はどの何のために犬を飼っていたのだろうか。
タックたちは推理をくる広げる。

ケーコたんの小学生の頃の話。
彼女が小学生の頃、近所で「ケイコ」という名前の少女が4人連続で誘拐された。危害を加えられることも身代金を要求されることもなく、ぬいぐるみをお土産にもらって、その日のうちに帰されていた。
近所に住んでいた「ロリコン男」が疑われたが、明確なアリバイがあり、彼の犯行ではあり得なかった。
誘拐された4人のケイコたちが、ぬいぐるみが5体用意されていたと証言したため、もう一人のケイコが狙われる懸念もあり警戒体制が敷かれた。
だが「ロリコン男」は交通事故で死亡し、それ以降、事件は起こらなかった。
ケーコたちは、事件の背後にあった狙いを推理していった。

タックと、生みの母美也子との確執。
美也子は父からの性的虐待を受け「セックス依存症」に陥っていた。高校生のころにタックを産むが、責任能力がないと判断され、タックは父が引き受けた。その後、父は別の女性と結婚し、タックはその女性を母親だと思っていた。

小学生の頃、近所に美しい女性が嫁いできた。当時小学生だった、タックの双子の兄である千治が、美也子に誘惑され関係を持った。美也子が実の母親だと知った千治は、自ら命を経ってしまった。

その後、美也子は姿を消していたが、今回、千暁の担当教授の妻として再び姿を現した。

感想

凄じい構成力。

まずはタックと母親の確執を中心的テーマとなっている。

そこに挟まれる「純粋論理的な推理問題」なエピソードが、それぞれラストにつながっていく。
・ルルのストーカー問題から「共依存の両面性」
・ボアンの過去の話から「防衛機制としての記憶改竄」
・タックの過去の話から「人間関係の客観性の不確かさ」
などが、それぞれ意味のあるピースになって、物語の説得力を増していく。

人間の「業」の恐ろしさが盛り上がるラストで、いきなり「愛」が物語をかっさらっていく。

読んでいる途中は「長くてダラけるな〜」と思ったが、読み終わってみると無駄がない。すごい作品だ。

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