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麦酒の家の冒険

麦酒の家の冒険

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あらすじ

「ビールの詰まった冷蔵庫と、ベッド一つしかない家」
この状況が何を意図しているのか。

不思議な家に迷い込んだ、タック(匠千暁)、タカチ(高瀬千帆)、ボアン(辺見祐輔)、ウサコ(羽迫由起子)の4人が、酔っ払い妄想全開の推理を繰り広げていく。

大学の夏期休暇、4人はR高原の国民宿舎に遊びに来ていた。

帰路、土砂崩れの標識や交通事故の影響で、ボアンの運転する車は遠回りを余儀なくされ、途中でガス欠になってしまう。

車を捨て、数時間かけて夜道を歩いた4人は、奇妙な民家に辿り着いた。

その家には、1台のベッドと冷蔵庫以外、一切の家具がなかった。
2階の一室、ウォークインクロゼットに隠されていた冷蔵庫を見つける。冷蔵庫の中と、その横に置かれた段ボールに合計96本の缶ビールがあった。また冷凍庫には冷やされたジョッキが13個入っていた。

夏の夜道を半日以上飲まず食わずで歩いてきたタックたちは、思わずそのビールを失敬してしまう。

徐々に酔い始めた4人は、その家の不思議な状況が何を意図したものなのか、めいめいに推理を繰り広げる。

誘拐説、ドッキリ仕掛け説、不倫カップル説、AV撮影現場説、子供しつけ説、などなど。根拠薄弱ながらもバリエーション豊かな説を戦わせ、4人の夜は更けていく。

そんな中、タカチは「もう一軒、ビールの家がある説」を唱えた。

翌日、4人は知人に迎えにきてもらう。
タカチが「もう一軒のビールの家」の存在を予言した場所を訪れ、似たような建物に「ビールの入った冷蔵庫とベッドだけ」が備えられているのを見つけた。

一体誰が何のために準備したのか。
4人の推理はさらに広がっていった。

感想

実際現場を訪れたりはするが、限定された情報から論理だけで推理していく「安楽椅子探偵」に近い。

どちらかというと「こういう状況で、こういう判断をするのは不自然」というような、蓋然性ベースの論理の積み重ねなので、論理的な「スッキリ感」はない。「純粋推理」にするなら、もう少し短く締めた方が伝わりやすいと思う。

ただ、気心の知れた仲間と飲みながらダベってるような「ダラダラ感」が心地いい。このシリーズの登場人物たちが、それぞれ好きなので、キャラクタ物として楽しめた。

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