オーダーメイド殺人クラブ
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あらすじ
中学2年生、小林アンのものがたり。
スクールカースト上位のリア充女子、芹香や倖たちと一緒に過ごす毎日、恋愛やアイドルの話にすら気を遣う日々に疲れていた。
一方でクラスの「昆虫系男子」や、小学校時代からの友人であるオタク系女子は「下」の存在だと馬鹿にし、30代でカワイイ系を狙う音楽教師やズレた熱さを持つ副担任たちも軽蔑していた。
赤毛のアンに憧れて「アン」と名付けた母親の「垢ぬけなさ」を疎ましくも思っていた。
一方アンは自分の中に「闇」を意識していた。
同年代の少年少女が起こした犯罪記事を切り抜いてスクラップしたり、少女の人形を死体に見立てた写真集を眺めたり、「ダークなものを美しいと感じる感性」を特別なものだと考えていた。
ある日、アンは同級生の徳川勝利が「小動物の入ったビニール袋」を踏みつけ、血を滴らせているのを目撃する。アンは彼が少年犯罪者「A」になる可能性を感じた。
アンは徳川に「私を殺してほしい」と伝える。
自分の命を使って、人々の記憶に残る「自分の事件」を作りたいと考えた。
徳川はアンの希望を受け入れた。
二人は、事件の計画をノートに記し、一緒に「アンの死」という作品を作り上げていく。
感想
この話、大人がかっこいい。
垢抜けない親が恥ずかしかったり、完璧であるべき大人の「不完全さ」に苛立ったり、健全な中二は「大人を見下す」
一方では同年代のコミュニティーを絶対視し、世界が狭く息苦しくなる。
でも、大人読者の視点から見ると「不完全さを受け入れて強く生きる大人たち」がやたらカッコいい。
アンが「気持ち悪い」と評する副担任の男性教諭は、生徒との距離の取り方が下手で「不完全」だけど、その熱量や、彼なりの気遣いがいい味出してる。
中二少女の目からみれば「カワイイを狙う30代女性」は、みっともないかもしれないけれど、彼女が直面していた事実を知ると、その強さに心打たれる。
アンの母親も素晴らしい。自分の親には特に完璧を求めてしまうから、少しでも「ダメなところ」がみえると嫌になる。
そんな中二の娘を理解し、踏み込みすぎず突き放さず、愛情がにじみ出ている。
ダサい大人たち、意外と頼りになる。