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運は操れる

運は操れる

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要約

運を理由にすると人は成長しなくなる。

自分の手で運を操るため、不安に強くなり、試行回数を増やし、気づく力を鍛える方法を解説していく。

  • 運に纏わる5つの真実
    運を操る力を鍛えるには「運のとらえ方」を変える必要がある。典型的な5つの誤解を挙げていく。

①「波に乗っている」のは気のせい
 ギャンブルの例をあげ「勝った後は負けにくい安全な賭け方をするが、負けた後は取り戻そうとしてリスクの高い賭け方をする」ことが「運の流れ」のように見えるのだという。
確率もチャンスも平等。違いを生むのは本人の努力と、勝負どころを見極める経験。

②宝くじにあたっても幸せになれない

 宝くじの高額当選者は、その後不幸になるケースが多い。相応の努力をしてお金を稼いだ人は、お金の使い方や節約の仕方を身につけるが、偶然大金を手に入れた人には準備が伴わない。
転がり込んできた幸運を生かせるかは、その人が運を味方にする準備ができているかどうかにかかっている。

③スピリチュアルで運は開けない

 判断に迷う状況では、差し出された答えに飛びつきやすくなってしまう。思考停止せずに「今できる努力」をするのが運を開く道。

④運/不運は生まれた環境と関係ない

 生まれた時から運/不運が決まっているわけではない。
成果が出ないことを、性格や環境のせいにせず、自分の性格を把握した上で、その能力が活かせる場所を探す行動をとれば、ネガティブ面をポジティブに変えていくことができる。

⑤運は自分でコントロールできる

 自分は幸運だと信じている人は、楽観的に物事を受け止め、希望を高める行動を起こしていく。
人は、自分が成長しているとき、右肩上がりの状態にあるときに、最も幸せを感じる。運を意識しながら行動や生活習慣を変えていくことが、長期的にみると運を引き寄せることになる。

  • 運を操る3つの方法
    「確率論的な運」は、自分の行動で変えることができない。自分でコントロールできる「考え方」「物事の見方」「行動」「習慣」を変えることは、長い人生で「当たり」を引く可能性を高める。

運を操るためには、以下の3つが大切。
 ①不安に強くなること
  ポジティブな方がリラックスしていてチャンスに気づきやすい。

 ②試行回数を増やすこと

  精度を上げようと立ち止まって考えるより、たくさん動いた方がいい。

 ③気づく力を鍛えること

  訪れたチャンスに気づき行動に移せるかどうかが大切。

  • 不安に強くなる5つのテクニック
    不安の強い人は、注意力、集中力が散漫になり失敗しやすく「運が悪い」と感じて負の連鎖が強化されていく。不安に強くなるテクニックを紹介する。

①「ネガティブバイアス」の罠に気づく
 人間は本能的にネガティブなことに強く反応する。「ネガティブバイアス」が存在することを意識し、必要以上に不安を感じているのだと気づく。
同じ情報をどう解釈するかで、見えてくる世界はガラリと変わる。

②「脱フュージョン」でネガティブ思考を手放す

 混ざり合った感情の中から「ネガティブな思考」を切り離す。
不安を得点化して客観視したり、言葉にして外に出したりするのが有効。

③「失敗ノート」をつけて読み返す

 客観的にみることのできる「他人の失敗」を省みる。

④「ビックウィン仮説」にまどわされない

 「以前うまくいったやり方だから今回もうまくいく」という思い込みを捨てる。大きな成功をした後にこそ冷静になることが大切。


⑤人生のコントーラビリティを高める

 「人生を自分でコントロールできている」という感覚が幸福度を高める。
心地よいと感じる「コンフォートゾーン」の外に目を向け、行動し発見することでコントロール感を得ることができる。

  • 試行回数を増やす7つのテクニック
    すべての努力が夢を叶えるとはいえないが、起こした努力は確実に現実を変化させる。確率を変えることはできないが、試行回数を増やすことで成果をコントロールすることはできる。

①「As Ifの法則」で幸運な人になりきる
 思い込みで運は上がる。成功を信じているからこそ失敗してもチャレンジできる。
「as if I am lucky – あたかも幸運であるように」振る舞い、自分が幸運だという思い込みを強化していく。

②「ピグマリオン効果」で期待を現実に

 人は期待されると、その気持ちに応える行動をとることを「ピグマリオン効果」という。
自分自身にポジティブな言葉でピグマリオン効果をかけ、本気でその言葉を実践しようという行動に移す。

③「プレ・パフォーマンス・ルーティン」を行う
 パフォーマンスを高めるため、本番前に行う定型的な準備行動を「プレ・パフォーマンス・ルーティン」という。
決まった行動を行うことで、不安よりも行為に意識が向き、儀式によって行動を管理できるようになる。

④レジリエンスを高める
 試行回数を増やすと失敗回数も必然的に増える。ストレスや重圧に柔軟に対応し、困難を乗り越えていく力を「レジリエンス」という。
ネガティブな感情を書き出す「筆記開示」や、運動・ヨガ・瞑想などで、レジリエンスを高めていくことができる。

⑤「ビッグ・ファイブ理論」を戦略的に活用する
 ビッグ・ファイブ理論の観点から自分の特性を見極め戦略を立てる。
・協調性:チームワーク
・誠実さ:出来事、目標にどう対応していくか
・外交性:周囲に対する社交性、積極性
・神経症的傾向:プレッシャーへの反応
・解放性:新しいことへの好奇心、感受性
5つの特性のうち、運に大きく影響するのは「外交性」「神経症的傾向」「解放性」

例えば外交性が低い人であれば「外交性の高い人を狙って友達になっていく」という戦略で足りない部分を補うことができる。

⑥「恥さらしトレーニング」で対人不安を消す
 時間をかけ、少しずつハードルを上げながら心身を慣らしていく。
知らない人に声をかけるなど。

⑦「運動日記」で運がよくなる
 1日20分程度の軽い運動で、劇的に行動力を高めることができる。
「その日どのような運動をいたか、どんな良いことがあったか」を日記にすることで、効果を認識することができる。
また、朝の運動は特に効果的。

  • 気づく力を鍛える5つのテクニック
    幸運の総量は誰も大差がない。気づいて行動に移せたかどうかが結果を左右する。

①呼吸法と瞑想でリラックスする
 神経症的傾向が高い人は、緊張しやすく、ストレスがかかると呼吸が浅く、早くなり、脳への酸素供給が滞って、集中力、判断力が低下する。

タクティカル・ブリージング」で改善が期待できる。
 ・口を閉じて鼻から4秒かけて息を吸う
 ・4秒間息を止める
 ・4秒かけて口から息を吐き出す
 ・4秒間息を止める
 ・以上を落ち着くまで繰り返す

時間をかけられる状況ならば、瞑想がおすすめ。
初心者向けは「数息観-すそくかん」
 ・お腹を突き出し、背筋を伸ばして座る
 ・1.5m前をぼんやり見つめる
 ・ゆったり呼吸し、吐く息を数える
 ・10まで数えたら1に戻る
 ・意識が逸れたら、1からカウントし直す

②違う選択をゲーム化する
 解放性の高い人は新しいものに飛びつくのが早く、その分チャンスを掴みやすい。
「青い服を着ている人がいたら話しかける」など日常をゲーム化してみたり、「新しい行動メモ」で取り組みの「努力・戦略・選択」を書き出し意識する。

③「自己充足的予言」にとらわれない
 不運を感じていると神経症的傾向が強くなる。この状態では目先のチャンスに気づくことができない。
長期的視点で見ることで「目先の悩みはどうでもいい」ことに気づくことができる。

④「ワーキングメモリ」を解放する
 同時に作業をこなすことで、覚えられないものが増えてくる。一般的に平行処理できる情報は最大7つ。
集中すべきときは、周りに無関係なものを置かない。やるべきことを終わらせ、メモリを解放することが大切。

⑤「セレンディピティ戦略」で幸運をつかむ
 ふとした偶然をきっかけに幸運をつかみとった現象を「セレンディピティ」という。経験則や常識と、直感との境界をゆるめたときに、ひらめきがやってくる。
言語が通うじない宇宙人とのコミュニケーションを想像するゲームは、ひらめきを鍛える。またアイデアを思いついたとき、即行動に移す習慣はひらめき力を左右する。

感想

「運」を因数分解すると 「成功確率」✖️「試行回数」だ。

さらに「試行回数」を分解すると「機会に気づいた数」✖️「やってみようと気になった数」。

本書では
 ・不安を取り除く=やってみようという気にさせる
 ・気づく力を鍛える=機会を見つける
を解説して、さらに、試行回数を増やす方法も説いている。

「神頼みで確率を上げる」ことはできないが、「自分ごととして試行回数を増やす」ことはできる。

ただ「試行回数を増やす」にしても、コスト意識がないとリスクもあるのだと思う。


試行回数を増やすのは「諦めたらそこで試合終了」という考えにつながる。
これは「出るまで回せば、ガチャ排出率100%」と意味的には全く同じだ。

スポーツの世界であれば「諦めないしぶとさ」が美徳に見える。
一方ソシャゲだと、同じ「しぶとさ」がなんとも寒々しく見える。

「努力や根性」は、いくらでも湧いてくる「固定費」だけど、現金購入は「変動費」だから、湯水の如く使うのは馬鹿、というコスト意識があるのだろう。

実際には「努力や根性」のコストも有限で、ある意味で金銭より貴重だ。
「足で稼げ」「試行回数を増やせ」で、搾取されないよう気をつける必要がある。







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