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ガラパゴス

ガラパゴス

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あらすじ

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明の遺体調査で自殺だと思われていた事件が殺人であったことに気づく。

田川は現場に残された僅かな手掛かりから、遺体が宮古島出身の仲野定文のものであることを突き止めた。

中野は両親を失い祖父と暮らしていた。
中学卒業時に、知り合いたちから模合という共同出資を受け、九州の高専に進学する。

高専では優秀な成績をおさめた。だが就職の時、希望会社への推薦枠を友人に譲ってしまう。就職指導教員のメンツを潰してしまい、まともな会社に入ることができなかった。

仲野は派遣社員として登録し、期間工として各地を転々としながら暮らしていた。

仲野は派遣社員の立場の弱さを実感する。
派遣社員の立場は弱く、生活はギリギリだった。

それでも仲野は、祖父から譲り受けた三線の弾き語りをしながら、派遣仲間たちを力づけ、彼らに慕われて生活していた。

やがて行き着いた、トクダモーターズの工場で、仲野は「問題」を起こす。


捜査一課特殊犯捜査係の鳥居勝は、学生時代の先輩である森喜一と繋がっていた。森は人材派遣会社パーソネルズを一代で立ち上げ業界大手にのし上がり、後輩である鳥居から情報を得ながらうまく立ち回っていた。
鳥居の側も先輩警察官たちに天下りのポジションを提供してもらうなど、持ちつ持たれつの関係が築かれていた。

トクダモーターズの松崎直樹社長は、社内で傍流と呼ばれる部署から、苦労を重ね社長の地位に上り詰めていた。

数年前に起きた「問題」で森社長に助けられた見返りに、今般パーソネルズの派遣社員を大量に採用する計画となっていた。

田川が仲野の事件を探るうち、彼がトクダモーターズ工場で勤務していた時に起きた「問題」にたどり着いた。

鳥居から捜査情報を得て立ち回る森たちに、田川が執念の捜査で立ち向かう。

感想

現代の『蟹工船』というべきか。
派遣労働の問題に深く切り込んでいる。

自分の周りにも派遣社員さんはいるけれど、一緒にお昼ご飯食べるし、飲み会にも一緒に行くし、給与も手取り額では大差なさそうだ。
ちょっと誇張が過ぎるとも思う。工場などでは違うのかもしれないけれど。

とはいえ、いつ契約を切られるか分からないという不安定さはあり、企業にとって使い勝手がいい分、働く側が弱い立場に追いやられているのは間違いない。

経営視点でみると、人件費を変動費化できるのは大きな魅力だ。
常に右肩上がりで成長してきた時代ならばともかく、現代では環境変動に耐えられる柔軟な仕組みが必要なこともよく理解できる。

さらに昨今のリモートワークの浸透が「職場の雰囲気」だとか「暗黙知の継承」みたいな、定量化しにくい要素をどんどん排除してしまっている。

長い目で見るなら、労働環境という面では会社組織に拘らず、プロジェクトベースで都度集まるような仕組みの方が、労働者側にも経営側にもメリットがあるのだとは思う。

ただ現状のパワーバランスのまま「プロジェクトベースの離合集散」を進めれば、インフラを抑えた企業側が圧倒的に強く、労働者側はさらに弱い立場に追い込まれてしまうだろう。企業単位で最適化する限り、人件費を抑制する方向にしか動かない。

企業に期待はできない。
本書でも田川たちは強欲な企業に一矢報いたが、全体的な流れを止めることはできなかった。暗い終わり方だ。

田川が「働きたい、単純にそう思うことがこんなに面倒なご時世になっているとは考えもしなかったよ」と言う通りで、シンプルに働くだけでは色々なところに絡め取られてしまう。

一方で、働くことを主体的に考えられる人にとっては、かつて無いほどの可能性が与えられいる、ともいえるだろう。

もう一つ、日本のハイブリッドが独自進化でガラパゴスになっているという話、これは状況の変化が激しい。

確かに数年前までの欧州では、ターボなどで排気量を抑えつつピークパワーを稼ぐ手法で低燃費を達成していた。だがここ数年はフルEVへの移行が急速に進んでいると思われる。
ハイブリッドは確かに日本独自のガラパゴスな技術だが、超低燃費なガソリンエンジンも、今ではガラパゴスになり始めている。

一つ言えるのは、技術の方が、経済の仕組みの変動より速く動く、ということだろうか。

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