おしまいのデート
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あらすじ
「最後のデート」をテーマにした5つの短編集。
- おしまいのデート
両親の離婚後、彗子は父方の祖父と定期的に会っていた。
母親の再婚が決まりそうになり、二人が会うのは、おそらくこれが最後になる。約束したわけではないけれど、お互いがなんとなくそんな思いで、おしまいのデートに向かう。
- ランクアップ丼
母子家庭に育った三好は、高校時代に同級生と喧嘩した後、隣のクラスの担任だった上田にうどん屋に連れて行かれた。
上田は何の説教をするわけでもなく、うどん屋で一番安い玉子丼をご馳走し、ただ黙って食べた。三好が学校で何か問題を起こす度、上田は彼を連れうどん屋に向かい、ただ黙って玉子丼を食べた。
三好が卒業する直前の2月、上田は最後の晩餐だといって、いつもと違う「天丼」を頼んだ。
だが、三好の就職後、彼は給料日になると上田を呼び出し「玉子丼」をご馳走することになった。
上田が三好に玉子丼をご馳走したのは21回。
三好がご馳走するのが同じ回数になる時、彼は天丼をご馳走しようと心に決めていた。これからは貸し借り抜きで対等に好きなものを食べればいい。三好はやっと大人になれると感じていた。
だがその日、いつものうどん屋に上田は現れなかった。
- ファーストラブ
男子高校生の広田は同性の宝田にデートに誘われた。
一緒に映画を観て宝田の作った弁当を食べる。
同棲に興味のない広田は焦ったが、宝田に特別な気持ちはなく、ただ過日の出来事のお礼をしたいというだけだった。
そして宝田は突然転校する。
- ドッグシェア
夫と離婚した久永は、仕事の帰り道に捨て犬を見付けた。
久永はその犬をポチと名付けビスコを食べさせる。
翌日、久永が犬のところに行くと餃子が置かれていた。犬にとってニンニクはマズイし久永は慌てて餃子を処分した。だが次の日、ポチの前にはエビチリが、さらに翌日にはごま団子が置かれていた。
少し早めにポチのところに行った久永は、中華料理を与えていた少年 内村と出会う。内村はポチは女子だといいマリリンと名付けていた。二人は間をとって、この犬を久村ポチリンと名付け、シェアして育てることにする。
子犬だと思っていたポチリンは老犬だった。
- デートまでの道のり
保育士の祥子は、カンちゃんと仲良くなりたかった。
祥子はカンちゃんの父、修平と付き合い始め、やがて結婚することも意識していたが、カンちゃんには関係を気づかれないよう気をつけていた。
そしてなかなか懐こうとしないカンちゃんに戸惑っていた。
保育園の学習発表会は父兄への重要なプレゼンだった。
だがカンちゃんはどうしてもちゃんと踊ろうとしない。園長からはプレッシャをかけられる。
困りきった祥子にカンちゃんは「今日のお遊戯がうまくいったら、お父さんと、先生と、僕とでデートしよう」と提案する。
感想
瀬尾さんのお話はどれも地に足がついている感じがする。
もちろん作られた物語なんだけど、等身大でリアルな生活感が伴っている。
おしまいのデートでじいちゃんは問う。
「さて、彗子はどうする?又聞きの情報を信じて、ただ頷いて暮らすのか?」
自分の目で見て感じたこと、日々経験することにこそ価値を置いているのだろう。
キルケゴールの「Life is not a problem to be solved, but a reality to be experienced」という言葉が大好きだ。
人生の究極の目的とか、生きる意義を探すんじゃなくて、いま目の前にある事を慈しみ、一緒にいてくれる人を愛する。
そんな人生を送りたいと思ってると、瀬尾まいこさんの物語はしんみりと心に沁みてくる。