硝子の塔の殺人
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ミステリの全部乗せや!
ミステリのお約束を「これでもかっ!」とブチ込んできてる。
そうです。本当はこういうのが読みたかったんです。
まず超ベタな舞台設定に興奮する。
・外部との連絡が絶たれたクローズドサークル!
・奇妙な形の建物(間取り図付き)!
・エキセントリックな名探偵!
・いわくありげな参加者たち!
と一切の衒いを振り切り本格ミステリのお約束を集めている。
秋葉原以外ではミステリにしか生息しない「メイドと執事」の登場にも気分が盛り上がる。
その作り込まれた舞台で、
・ん、倒叙形式!?
・と思いきや フーダニット、ハウダニット、ワイダニット!
・密室!
・ダイイングメッセージ!
・アリバイトリック!
・暗号!
・〇〇〇〇〇〇!!
・さらに〇〇〇〇〇〇!!!
と、中身も王道中の王道。
これだけの要素を「てんこ盛り」にしても破綻させない構成力と筆力が「すげぇ」。
さらにそこから、もう一段階のどんでん返しを仕掛ける。
もう、圧巻です。
重厚な社会派ミステリとか、人間の業を描き切ったミステリとかも面白いし、リアリティを追求する方向性も好き。でも本音をいうと、こういう超ベタな「本格ミステリ」が実は大好き。
懐石料理もフレンチのフルコースもいいけど、心から美味いと思うのは空腹時にかっ込む牛丼だったりする。いい大人になると言いにくいけど、やっぱり好き。そういう感じです。
ミステリ作家が経験を重ね成功していくと、だんだん重厚な社会派ミステリとかに主軸を移していくケースが多い。そんな中、脂の乗り切った知念実希人さんが「本格ミステリ」欲を満たしてくれる作品に回帰してくれたのは嬉しい。
次回作に期待!!
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あらすじ
DNAを細胞核まで送り込む「トライデント」の発明で遺伝子治療を進歩させ、莫大な富を築いた神津島太郎は、そのトライデントを模したガラス張りの三角錐型屋敷「硝子館」で暮らしていた。
ある夜、その硝子館に知人を集め「重大な発表」をすると予告する。
その日、硝子館に集まったのは
神津島の専属医師の一条遊馬、
刑事の加々見剛、
ミステリ作家の九流間行進、
編集者の左京公介、
霊能力者の夢読水晶、
メイドの巴円香、
執事の老田真三、
料理人の酒泉大樹、
家主の神津島、
そして自ら名探偵と名乗る碧月夜。
神津島の発表を待つ時間、第一の事件が動き始める。