ワルツを踊ろう
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「僕はね、たとえどんなに幼稚であったとしても、理不尽を憎む気持ちは必要だと思っているし、それを糺そうとする人を尊敬します」
うーん、絶妙な後味悪さ。
年寄りばかりが残った限界集落と、そこにUターンしてきた男のお話。
もう何年も隣人の名前も知らない気楽な都会生活を満喫している身には、濃密な人間関係から抜け出せない状況は、下手なホラーよりもずっと強い恐怖を感じさせる。
やたらと薄っぺらい主人公だが、それでもおぞましい「地縁」に抗おうとする姿勢には共感を覚えた。私だったら、惨めでもカッコ悪くても、とにかく逃げ出しちゃうだろう。
ちなみに本作は『魔女は甦る』『ヒートアップ』にあった設定を引き継いでいる。
その視点で読み直すと、いろいろな伏線が隠されてて面白い。
あらすじ
外資系金融企業をリストラされた溝端了衛は、中学生のころまで暮らしていた東京都下の限界集落、依田村に戻ることを決める。
緑豊かなスローライフを夢見て移住した了衛だったが、9人しかいない寂れた集落はプライバシーの観念もなく、濃厚な地縁に支配された息苦しい場所だった。
それでも了衛は村に溶け込もうと努力する。
大好きな「美しく青きドナウ」をかけたり、かつての経験を活かした資産運用相談を行なったり、自腹を切ってカラオケパーティーを企画したり。
だが了衛の行動はことごとく裏目に出て、村の住人たちから少しずつ浮いてしまう。
ゆっくりと追い詰められた了衛は、やがて狂気に魅入られていく。