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仕事2.0 人生100年時代の変身力

仕事2.0 人生100年時代の変身力

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LIFE SHIFT の日本版

リンダ・グラットン氏の『LIFE SIFHT』をベースに日本の実情に合うよう「翻訳」したような感じ。

『LIFE SHIFT』を読んで「分かる! でも実践は無理だなぁ・・」と感じた私のような人には、ベストの内容。

会社に頼り切った働き方はもう成り立たないと多くの人が感じ始めているけれど、今はまだババ抜きのような状況。

「決断しない」ことが最大のリスクなのかもしれないけど、「状況に流されよう」という決断もありかなぁ。

要約

安定志向はもう無理

近年、若い世代に安定志向が広がっているらしい。

だが、現代の日本で昭和時代のような雇用スタイルを維持することはすでに不可能だ。

少子高齢化と長寿化が進み「若い現役世代が老年世代を支える」という仕組みが成り立たなくなってきている。

人生100年時代を幸福に生きるには、若い時代からの貯蓄・節約や投資で死ぬまでの全てを賄うというのは非現実的。元気に働ける現役時代を延ばすのがもっとも合理的。

長く元気に働く戦略を現役時代から準備しよう、というのが本書の提言になる。

LIFE SHIFTが示した100年時代の働き方

リンダ・グラットン氏はその著書『LIFE SHIFT』で、人生100年時代を生き延びる術として以下のような提案をしている。

・人生を「教育・仕事・引退」の3ステージで捉えるのはもう無理

・有形資産よりも無形資産を蓄えるべき無形資産として以下の3つを挙げる。

①生産性資産(仕事に活かせるスキルや知識)
②活力資産(心身の健康、良好な人間関係など)
③変身資産(自分自身の理解、変化を助けるネットワーク、意欲など)
中でも変身資産が最も重要

・具体的な働き方としては
①エクスプローラー(適職を探す)
②インディペンデント プロデューサ(小規模でも自分で仕事をする)
③ポートフォリオ ワーカ(複数の仕事を並行して行う)
といったステージを提案している。


これに対して本書著者の佐藤氏は「これらを日本でそのまま適用するのはハードルが高い」とし、以下のような提案をしている。
①専門性の亢進と領域の拡大
強みを複数持つ「タグの掛け合わせ」が重要。例えばライターとして読ませる文章を書けるだけでなく、デジタル対応力やSNSでの情報発信力など、複数の強みを掛け合わせることができれば、その分だけ稀少な存在になることとができる。

コミュニティの拡大
一つの会社でキャリアデザインをするより、どのような属するコミュニティを選ぶコミュニティデザインの能力が求められる。
会社の同僚や家族などガッツリ同じ環境ですごしている「強いつながり」よりも、副業や勉強会などを通した「弱いつながり」の方が、新しいきっかけを運んできてくれる

③家族での分担
家庭がある場合は、家庭内での分担が有益。
妻がキャリア上で重要な時期であれば夫が家事育児を引き受ける、夫が攻める時期であれば妻が助けるなど、ステージに応じた分担をすることで戦略が広がる。

日本型雇用の限界

日本では少子高齢化が進み、企業の収益力が落ち続け、昭和に確立した「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」という日本型雇用は維持できなくなってきている。

・働き方改革の本音
「働き方改革」では、極端な長時間労働を制限するなど、働く人を守ることが前面に出されているが、その裏には成果主義の促進や、解雇の容易化など、「昭和型雇用を維持できなくなった企業」の本音がある。

「一億総活躍」という言葉にも、全ての人がいつまでも生き生きと暮らしてほしい、というだけでなく「年金制度の維持は不可能だから、長く働く戦略を各自で考えなさい」という意味も込められている。

・副業解禁
日本でも国のガイドライン変更の影響もあり、従業員の副業を許可する会社が増えてきた。働き手側にとっては自由度が高まってきたといえる。

一方で会社側の本音は「高コストの人材をフルタイムで抱えておく余力はない」「重要な業務を行う人材は足りていない。切り売りでもいいから欲しい」というところにあり、ここでも、指示待ち人間と自ら主体的に価値を創造できる人間の格差が広がっているといえる。

・新卒一括採用の限界
日本独自の新卒一括採用の仕組みは、若年失業率を下げ安定雇用による消費拡大の効果も持っていた。

だが昨今の日本企業では、全ての従業員を一から育てるだけの体力が無くなり、一方で革新的な価値を作り出せる人材は不足しているため、従来通りの新卒一括採用が非合理的なものになってきている。

新卒採用時の給与も一律横並びではなく、入社前に成果を上げている人材は高給で報いるようになってきた。世界標準の給与レベルでないと優秀な人材は確保できないというのが現実だ。

人生100年時代を生き抜く働き方

科学技術の急速な進歩により、古い知識が役に立たなくなっていく。

数年前に仕入れた知識はほとんどが役に立たず、学習を怠っている大人は学んでいる次世代の小学生にも劣る、というのが現実。

過去の経験は貴重な学びだが、状況の変化を考慮せず過去のやり方をそのまま踏襲するのはデメリットが多く、むしろ経験が足を引っ張っている。

「安定した環境」では自分が陳腐化していると知るべきだ。

コンフォートゾーン(快適だと感じる範囲)から一歩踏み出すことが、成長のためには大切で、常にルーキーの心意気を持つことが必要。

ルーキーというのは若手だけでなく、むしろ最大の成果を出すルーキーは「経験をもちながら、それとは違う新しいことに挑戦する中堅層」だ。

副業は「今までとは違う分野に挑戦する」という意味でも意義深い。

人生100年時代の学び方

大人の学びは「知識」よりも「経験総量」を上げることが重要。

経験総量を上げるためには自ら新しい経験をすることも大切だが、人の経験から学ぶ「代理体験」を活用することも必要。

代理体験としては
・読書を通し先人の経験を学ぶ
・ネットワークを通して、人の経験を知る
などが有効だ。

また「自分が教える」ということも学びに繋がる。

「成長していること」自体が学びのモチベーションとなり得る。自分の成長を認識できるようにしておくと良い。


AIやロボティクスが進化していくと、知識やIQなどの「認知能力」よりも、人間性、好奇心、レジリエンス(しなやかな回復力)、グリッド(やり抜く力)、倫理、リーダーシップなどの「非認知能力」が求めらるようになっていく。

非認知能力のベースとなる性格スキル「真面目さ・解放性・外交性・協調性・精神的安定性」は、大人になってからも伸ばすことができる

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