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ユダヤの商法

ユダヤの商法

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それって、藤田田さん個人の感想ですよね

「ユダヤ商人の知恵」と、藤田氏個人の「成功譚」がごっちゃになってます。

「女も商材」だとか「休む奴は給料返せ」とかの昭和感に辟易し、「話があるならお前が来い」とか、隠しきれない小物感には正直失望してしまいました。

でも5000年生き残った「ユダヤ商人の知恵」の部分には、今聞いても納得感があり、全体としては読む価値のある本だったと思います。

・重要ポイントを集中して狙う「2・8の法則」
・国家にも会社にも執着しないドライさ
・簡単に信用しないが、約束は徹底的に守る姿勢
ある程度の時間軸で見ても普遍性がある、あるいは普遍性のあるものが生き残ったのだと思います。


それだけの知恵を伝えてきたことを考えると、合理性を重視し人間関係もドライに割り切るユダヤ人が、定住する場所を持たないまま数千年にわたって民族としてのアイデンティティを保ち続けたことがとても興味深いです。

現代日本人の立場では「民族」と「国」とを濃厚に重ねてみているので「国を持たないのに数千年生き残った民族」が特殊なものに思えます。

ただよく考えると、世界的にみて現在の形の「国」という観念が固まったのは、せいぜいここ数百年のことなんですよね。

ユダヤ人が民族として生き残ってきたのは、国などではなくもっと別の力が働いたということなのでしょう。

あるいは「国とか会社のような流行りのフィクション」に揺さぶられない「より強固な骨太のフィクション」を持っている、ということかも知れません。

一度、ユダヤ人生活様式の根拠になっているという『タルムード』を読んでみたいと思いました。

要約

興味深い部分に絞って何点か拾ってみました。

・78対22の法則
いわゆる2・8の法則。重要ポイントを狙え、ビジネスなら8割のお金を持っている2割の金持ちを狙え。

・数字に強く
商売をするにあたっては、曖昧でなく数値化すること、素早く確実に計算することが必要。

・商材は「女と口」
女性の方が自分のために使えるお金を持っている。男性の消費は女性のため。狙いどころは女性の消費。
次善の商材は飲食品。どれだけ高価なものでも「食べればなくなる」ので、継続的な購買が期待できる。

・判断の速さと確かさ
複数の言語を扱うことで幅広い観念を持って考えられる。日本人であれば日本語+英語は最低限。

・正確さ
曖昧さをなくすため、どんなことでもメモを取る。

・今日のケンカを明日に持ち越さない
人は日々変化している。昨日のしがらみを今日に持ち越すべきではない。相手だけがわだかまっているなら心理的には有利に立てる。また辛抱強く「我慢しても取るものは取る」姿勢が重要。

・辛抱よりは見切り千両
予め最大リスクを設定し、そこまでは損しても動じない。でもそのラインを超えたら、それまでに投下した費用も躊躇わず切り捨てる。

・会社は道具
儲かる会社を作ることが楽しいが、会社自体には愛着を持たない。会社が高く売れるなら売ってしまえばいい。

・国籍も道具
国や国籍にも執着しない。国籍が商売に利用できるならすればいいし、必要なければ売ってしまえばいい。

・契約は神との約束
契約を重く捉える。簡単に相手を信用しないが約束したことは徹底的に守る。

・未決書類は商人の恥
ディクテイトの時間を確保し、必ず前日の未決事項を処理してから仕事にあたる。

・時間を盗むな
時間も商品、アポなし面会などはあり得ない。根回しも時間の無駄。

・働くために食べるのではなく、食べるために働く
仕事のために食事を掻き込むのではなく、美味しい食事を味わうために働く。人生の目的は「美味しいものを心ゆくまで食べること」

・納得するまで尋ねる
好奇心を突き詰める。相手の状況を知れば有利に戦える。

・健康を重視
十分な休息をとり、常に清潔を心がける。

・長い時間軸で考える
「自分の生きている時間」を現実的に認識しながら、世代を越えて事業を捉える。

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