蒼海館の殺人
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『紅蓮館の殺人』の続編です。
「クローズドサークル」+「災害パニック」+「超絶入り組んだ謎解き」がミックスされた構成は前作から引き継がれてます。でも謎解き部分の複雑な重層構造は数段レベルアップしてました。読み応えあります!
そして、複雑な謎解きのとへ時効して語られる「探偵という哲学」が、これまた面白い。
ミステリというフィクションの世界では、探偵は事件を解決する役割を担わされています。必然的に事件に巡り合わなければなりません。コナンくんがどれだけ優秀でも、事件を未然に防ぐわけにはいかず「米花町の死神」とならざるを得ません。
本シリーズの探偵 葛城輝義も、ずいぶん作者にいじめられてます。。
前作の『紅蓮館』では「嘘は絶対に許せない」し「誰かを傷つけても真実を追求せざるを得ない」という立場でした。
その結果「事件の謎は解いたけれど、誰も救われない」という、なんだか辛い話でした。
でも本作の葛城は一皮むけてます。
起きた事件の謎を解くことよりも「新たな事件を防ぐこと」を目指しました。
人の嘘を見逃しても、自ら嘘をつくことになっても、家族と友人「ここにいる全ての人を救う」ことを最優先とします。
世界には「真実よりも大切なこと」がある。
そのためには「清濁併せ呑む強さ」を持つ必要がある。
葛城はヒーローになったのです。
前作より、こちらの方が私は好きだなぁ。
あらすじ
『紅蓮館の殺人』で、探偵の無力さに打ちひしがれた高校生 葛城輝義は実家に引きこもっていた。
輝義の友人、田所信哉と三谷緑郎は、彼の様子を見るため葛城家の邸宅「蒼海館」を訪れる。
田所たちが訪れた当日は輝義祖父の四十九日の法事だった。館に集まったのは、輝義、田所、三谷と以下の人々。
・葛城健治郎 – 輝義の父、政治家
・葛城璃々江 – 輝義の母、大学教授
・葛城正 – 輝義の兄、警察官
・葛城ミチル – 輝義の姉、モデル
・葛城惚太郎 – 輝義の祖父、故人
・葛城ノブ子 – 輝義の祖母
・堂坂由美 – 輝義の叔母
・堂坂広臣 – 由美の夫、弁護士
・堂坂夏雄 – 堂坂家の長男、小学生
・丹葉梓月 – 葛城家のかかりつけ医
・坂口 – ミチルの元カレ、記者
・黒田 – 夏雄の家庭教師
全員が集まった食事の場で夏雄が「おじいちゃんは病死ではなく殺された」と言いだす。夏雄の両親は慌てて取り繕うが、記者である坂口は、彼の死について何かを掴んでいると仄めかした。そして坂口はその秘密をしったことで何度か襲撃を受けたのだという。
強力な台風の接近で、田所たちは帰宅できず、蒼海館で一晩を過ごすことになる。
深夜、坂口の部屋に散弾銃で頭を撃ち抜かれた死体が発見された。だがその死体は坂口のものではなかった。
台風は猛威をふるい川が決壊して町は飲み込まれてしまう。高台にある蒼海館にも水が迫るが、橋が壊れ外部に出る手段は奪われてしまった。
全てを計画した「蜘蛛」はお互いの不信をあおり、家族は疑心暗鬼の中にいた。
探偵 葛城輝義は「ここにいるすべての人を救う」ことができるのか。