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科学者たちが語る食欲

科学者たちが語る食欲

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「タンパク質多めでモテモテ短命」or 「炭水化物多めでだらしない身体で長生き」

どっちがいい??

「食欲」の仕組みを解き明かす本。
理屈が分かっても痩せるのは難しいけど、まあ分かってた方がマシですね。


バッタの食事について以下のような実験が行われました。
・タンパク質と炭水化物に分け自由に食べさせると、必ず一定の量・割合を摂る
・タンパク質と炭水化物の含有率が異なるペレットでは、一定量のタンパク質を摂る
・低タンパク・高炭水化物のペレットでは、必要なタンパク質量を摂るまで余分な炭水化物を食べ肥る
・高タンパク・低炭水化物のペレットでは、必要なタンパク質を摂った時点でエネルギー不足でも食事を止め痩せていく

つまり、バッタはタンパク質摂取を一定量にすることを最優先にしていたということです。
そのためには肥って動きが鈍くなっても食べ続けるし、逆にエネルギー不足で飢餓状態に陥っても食事を止めるのです。

これは「一定量のタンパク質は生命維持に不可欠だが過剰なタンパク質は毒になる」からです。過剰なタンパク質はテロメアを短くし個体の寿命を縮める作用があります。一方で性的魅力は強化され生殖を旺盛にします。

動物の食欲はタンパク質を最重要としたバランスを保つ仕組みなのです。


人間を含めた動物にもこのバランス感覚は備わっています。

では、それにもかかわらず現代人が食べ過ぎているのはなぜでしょうか。

人が食べ過ぎてしまうのは「超加工」された食品が原因だ、というのが著者の意見です。

タンパク質と比べ炭水化物は安価なので、食品会社は「低タンパク高炭水化物」の製品を売るのです。それでも人は一定量のタンパク質を取ろうとするので必要以上の炭水化物を取ってしまうのです。

また、加工度の低い食品であれば「食物繊維」が食欲を制限しますが、超加工食品では「食べやすい食感」のため食物繊維が除かれブレーキも効かない状態です。

さらに、人工調味料も食欲を騙します。例えば体がタンパク質を求めているとき「ビーフ風味のポテトチップス」を食べたいと思いますが、実際にはタンパク質欲が満たされないため大量に食べてしまいます。


本書は高タンパク食を推奨しているわけではないです。

「炭水化物、タンパク質それぞれ独立した食欲がある」のだから、むしろ「超加工食品に騙されて炭水化物を取り過ぎない」のが大切だという話ですね。高タンパク質ではなく、他栄養素とのバランスです。

そう思うと「ダイエットはPFCバランス」と言い切ったテストステロン氏は正しいんですね。彼の場合、推奨タンパク質比率がかなりマッチョ寄りですが。。

ポイント要約

[動物の食欲の仕組み]
・動物には、タンパク質、炭水化物、脂質、カルシウム、ナトリウムでそれぞれ独立した食欲がある
・それぞれの必要量が満たされると食欲はおさまる
・栄養素同士のバランス制限がある場合はタンパク質の量が最優先される
・タンパク質を控えると個体の寿命は伸びるが生殖が制限される
・タンパク質多めの食事は生殖に有利だが、個体の寿命は短くなる


[人が肥ってしまう理由]
・超加工食品が食欲を騙している
・低タンパクで炭水化物が過剰になる
・食物繊維の除去で満腹感が得にくい
・人工的な味付けに騙される


[健康的な食生活]
・自分のタンパク質必要量を把握する
・摂取エネルギー中のタンパク質比率は 子供15%、青年18%、妊婦20%、壮年期17%、中年期’15%、老年期20%
・超加工食品を避ける(自分が料理で使わない人工物を避ける)
・タンパク質は多様な食品から摂る
・食物繊維を摂る
・カロリー計算ではなくタンパク量計算
・食欲を信じる

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