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本を守ろうとする猫の話

本を守ろうとする猫の話

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人を思う心、それが本の力なんだ

「本を愛さない敵たち」の言うことがまともに聞こえる。
私の本の読み方は邪道なのでしょうか。。。


まず第一の迷宮では「多読」が叱られます。。

私も多読派で「たくさんの本を読むこと」を結構重視しています。
でも林太郎の祖父の
「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない
どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ」
という言葉はよく理解できます。

詠むだけなら頑張ればスピードアップできるでしょう。
でも読んだものを自身の思想と結びつけ行動に落とし込んでいかなければ、単なる文章の羅列に過ぎない。

逆にどんな本でも主体的な読み方であれば、何かしら得られるものがあるのかもしれません。


第二の迷宮では「効率的な読み方」が叱られます。

超効率派としては耳が痛い。
Audibleのオーディオブックは隙間時間を活用して3倍速で聴くし、要約ずみの「本要約チャンネル」を更に倍速で聴く。
なんなら映画も最近では倍速しか観てない。ひたすらタイパ(時間効率)を求めてます。

同時に「人生とは解決すべき課題ではなく、日々経験する現実そのもの」なのだという思いも強くあります。究極的には人生に目的などないのだから、その瞬間を最大限味わうことが大切なのだと思っています.

結局は「効率的に情報を仕入れる自分」というエンターテイメントを楽しんでいるのかもしれません。


第三の迷宮では「ビジネス至上主義」が否定されます。
まあここは概ね違和感ないですね。

資本主義では「利益を上げ続け成長し続けること」が生存の前提条件になっていますが、芸術・思想・哲学などの文化的側面では別の行動原理を許す余裕があるべきです。その余裕こそが本当の豊かさなのだと信じています。


もう少しゆっくりじっくり、実利から離れた読書を楽しむ余裕を持ちたいものです。

あらすじ

高校生の夏木林太郎は祖父の突然の死に戸惑う。
祖父の遺した「夏木書店」で、古書に囲まれ引きこもっていた。

そんなある日、人語を話すトラネコが現れ「本を敵から守ってほしい」と助けを求めてきた。

林太郎は「本を愛さない敵」から本を解放するため、トラネコの導く迷宮に向かう。

第一の迷宮「閉じ込めるもの」
第一の迷宮の主は「圧倒的な読書量を誇る知識人」だった。
一度読んだ本を再読することはないが、ただ読んだことを誇示するため本棚に本を飾っていた。

第二の迷宮「切り刻むもの」
第二の迷宮の主は「効率的な読書を追求する研究者」だった。
短時間で内容が把握できるよう徹底的に無駄を省く要約を作り上げていた。
彼の要約する『走れメロス』は「メロスは激怒した」の一言にまとめられていた。

第三の迷宮「売り捌くもの」
第三の迷宮の主は「売れる本だけを求める出版社社長」だった。
売れない古典名作よりも「人々が求める本」だけを作り上げていた。

最後の迷宮
最後の迷宮は「2000年近く前から読み継がれてきた本」との対話。
人々が本と真剣に向き合うことがなくなって力を失ってしまったと嘆く。

林太郎とトラネコは「正しいこと」の力を使い、閉じ込められた本たちを解放していく。

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