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神様のカルテ0

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あらすじ

神様のカルテ1~3の登場人物たちのプロローグとなる4つの中編。

有明
一止たちが医学部で国家試験を目指している時期の話。一止の友人辰也の視点で語られる。一止と辰也の三角関係など、それまでのシリーズ作品にあった出来事が別の視点から書かれている。

社会人を経験してから大学に入り医師免許を取ろうと奮闘している シゲさんや、元カレに惑わされる まどか たちを通して、一止と辰也の変人なりに誠実な生き方が見られる。辰也の視点から見る一止は格好良すぎる。

彼岸過ぎまで
神様のカルテシリーズの舞台となる「本庄病院」の話。

事務局長として採用された金山は病院の経営を立て直すために、入院期間の短縮などに取り組む。
金山の金勘定ばかりを優先させる姿勢に、本庄病院 古株の 乾先生、大狸先生、 古狐先生たちは衝突を繰り返す。しかし金山は圧倒的な経営手腕を発揮して、数十億円もする最新鋭の設備を導入し、医師たちが最高のパフォーマンスを出せることを目指していた。

大狸先生たちは、自分たちとは違う形で医療の理念を追い求める金山を、共に戦う仲間として認めていく。

神様のカルテ
一止が研修医として本庄病院に赴任した直後の話。

一止が初めて胃カメラ検査を行った患者は胃癌を患っており、状況も悪いことから早急な抗がん剤治療が必要だった。しかし患者は娘の結婚式がある1か月後までは治療を待ってほしいと言った。

一止は患者の意志を尊重し治療開始を延期したが、自分の判断に自信が持てない。指導医である大狸先生は「神様が書いたカルテで人間の命は決められている。医者が命の形を作り替えることはできない。限られた命の中で何ができるかを真剣に考えることだ」といい、一止の判断を支える。

冬山記
榛名が一止と出会った直後の話。 

雪山で滑落した男は、足を骨折し身動きが取れなくなっていた。離婚を迫られ帰る場所もなく、雪の中で生きる気力を失っていた。
登山写真家である片山榛名は、山小屋に辿り着いていない男を心配して吹雪の中を一人捜索し、男を見つけて小屋まで連れていく。
小屋にいた夫婦は、自分だけがつらいのだと考え、生きる意志を失った男を軽蔑していた。しかし榛名が男に「私も帰る場所がないと思っていた時期があった。帰る場所なんて、自分で作るものだ」と伝え、男は生きる気力を取り戻していく。

榛名が一止に「帰る場所」をもらったことを反対の視点から描いている。

感想・考察

この作者の作品が好きだ。

まず景色の描写が美しい。時には静けさを讃えた水墨画のように、時には心に刺さる色鮮やかな写真のように、風景が眼前に迫ってくるような迫力がある。その景色を味わうだけでも素晴らしい作品だと思う。

また、登場人物たちがそれぞれに違う立場で、それぞれに誠実に生きている姿に励まされる。神様のカルテ2で出てきた「良心に恥じぬことだけが、我々の確かな報酬である」という言葉のように、自分自身も良心に恥じぬ生き方をしたいと思わされる。

胃癌に罹った元国語教師が「小説は良い。小説を読むことで他人の考え方を創造することができる。優しさとは想像力だ」と語る。このシリーズでも登場人物たちはそれぞれが違う立場で、違う理想をもって生きているが、自分だけの正義に囚われず、他人の理念を理解しようとする優しさがある。

正義や理念は人それぞれだが、「絶対的な正義などないから相対的な生き方で良い」ということではなく、真摯な姿勢で理念・良心を追求しているのであれば、自己も他者も尊重して生きることができるのだと感じられる。

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