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私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

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生きているものだけが、

自分が生きているかを問うのだ

あらすじ

Wシリーズ5作目。逃走したウォーカロンについて調査し、アフリカの都市を訪問した ハギリとウグイ、アネバネは、「富の谷」と呼ばれる村落を訪れる。その村ではウォーカロンたちが特殊な状況下で生活し、働いていた。ハギリたちも、ウォーカロンたちが暮らす世界に入り込み、そこで起こっていることを知る。

前作で登場した分散型プログラムの「デボラ」の力を借り、その村落で起こっている謀略を暴いていく。

感想・考察

人間と区別ができないほど人間的な人造人間であるウォーカロンの存在、半永久的な寿命を手に入れ生殖能力を失った人間、肉体から切り離された脳の仮想世界での生活、圧倒的な処理能力で学習を重ねた人工知能 等、「人間とは何か」、「生命とは何か」、「知性とは何か」についての思考実験をするための舞台作りなのだと感じる。

「理路整然としない不合理性」、「ゆらぎ」、「飛躍」などでエントロピーの増大に逆らうのが生命であり、知性であるという見解を示しつつも、そういった「ふるまい」は人工知能にも可能なのだという視点もみせる。前作まではウォーカロンのような人工的な知性が物理的な肉体を持ったら人とどう違うのかという切り口だったが、今作では人間が肉体から切り離され仮想世界で生きるとしたら、プログラムとどう違うのか、という逆視点からの描写となっている。執拗に人間の本質に迫ろうとする作品群。

極めて哲学的で理屈っぽい作品ではあるが、ハギリとウグイの掛け合いは暖かく「人間的」な魅力に溢れていて、作品全体が明るくなる。このバランスが素晴らしい。

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