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ジェリーフィッシュは凍らない 〈マリア&漣〉シリーズ

ジェリーフィッシュは凍らない 〈マリア&漣〉シリーズ

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閉ざされた飛行船での「そして誰もいなくなった」

驚愕のトリックに騙される!

要約

飛行船は水素やヘリウムを使うため事故が多く,大きさも巨大で飛行機と比べて実用性が低かった。真空であれば比重はさらに低く小型化できるが、それを維持するための構造が重くなる。

ファイファー教授らの研究チームは、1970年代に極めて軽量だが強靭な樹脂による「真空気嚢」を使った「ジェリーフィッシュ」を実用化し普及し始めていた。

1983年、ファイファー教授ら6人の開発関係者はジェリーフィッシュ次世代機の試験飛行をしていたが、その最中に教授が毒殺される。

その数日後、雪山で全焼したジェリーフィッシュと6つの遺体が発見された。地元警察のマリア・ソールズベリーと九条漣は6つの遺体全てが、他殺されたものであることを知る。

閉ざされた飛行船の中で何か起こったのか。乗組員の視点で事件をリアルタイムで追うパートと数日後の捜査パートが交互に進展し、緊迫感の中、謎が解き明かされていく。

感想・考察

プロットが抜群にうまいと思う。

事件当時者視点での追いつめられる緊迫感、捜査側の視点での謎解きの面白さと、犯人側からの追い詰めていく視点が効果的に重なっている。

ジェリーフィッシュ内の配置図を載せる場所とか非常に細かく計算されていると思う。もしかすると「ジェリーフィッシュ」という呼称も英訳された時、ヒントにならないよう気を付けたのだろうか。

プロットが複雑な分、登場人物はそれほど多くなく人間関係もシンプルで理解しやすい。マリアと漣の掛け合いもライトミステリっぽい軽さで読みやすいのだが、ミステリとしての仕掛けは本格的でじっくり楽しめた。

中々の傑作。

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