アリバイ崩し承ります
こちらで購入可能
「時を戻すことができました。
犯人のアリバイは、崩れました」
あらすじ
「アリバイの主張は、時計がその根拠になっている」「だから、時計屋こそが、アリバイの問題をもっともよく扱える人間ではないでしょうか」という理屈はちょっと無理がある。。
時計屋の女性店主 美谷時乃が、仕掛けられたアリバイ工作を解きほぐしていく7つの連作短編集。
- 時計屋探偵とストーカーのアリバイ
刑事の「僕」は、時計屋に貼られた「アリバイ崩し承ります」の張り紙を見付ける。難事件に悩まされていた僕は、若き女性店主の美谷時乃に、アリバイ崩しを依頼した。
大学教授の女性が殺害された事件で、元夫は離婚した後も、女性教授にお金をたかりに来ていて、当日にも諍いがあったとの証言もあり、元夫が有力なようぎしゃとなった。
しかし彼には確かなアリバイがあった。女性教授の胃の内容物から死亡推定時刻はかなり細かく絞り込まれたが、元夫はその時間、現場から離れた居酒屋で食事をしていたことが確認されたのだ。
時乃は、仕掛けられた悲しいアリバイ工作を解き明かす。
- 時計屋探偵と凶器のアリバイ
暴力団同士の抗争が激化する地域で、郵便ポストに銃が捨てられているのが発見された。その後に、その銃を使って殺されたと思われる死体が発見される。
死体の見分と銃が発見された時間から死亡推定時刻は絞り込まれた。
被害者の勤めていた薬品会社で、被害者の上司が麻薬を横流ししていたとの情報が入り容疑者として調べたが、彼には確実なアリバイがあった。
刑事の「僕」は再び、時計屋探偵にアリバイ崩しを依頼する。
- 時計屋探偵と死者のアリバイ
刑事の「僕」は男が車に轢かれるところを目撃した。轢かれた男は死に際に、殺人を告白していった。男の証言にあったマンションで証言通りに女性が死んでいたので、犯人はその男に間違いないと思われていた。
ところが、男が持っていたコンビニのレシートや、女性宅の宅配業者の証言から、男には時間的に犯行を犯すことができなかったことが分かる。
死んでしまった男はどのようにアリバイを作り上げたのか。「僕」はまた時計屋探偵にアリバイ崩しを依頼した。
- 時計屋探偵と失われたアリバイ
ピアノ教師をしている女性が殺害された。頭部にピアノの跡がついていたため殺害場所は自宅だと考えられていた。また被害者女性がマッサージ店に訪れていたことから、死亡時刻は細かく絞られた。
被害者女性の妹が姉と仲たがいしていたという周囲の証言で、妹が容疑者とされる。スナックのホステスとして働いていた妹は犯行があったと思われる時間は眠っていてアリバイがない。
どうしても妹が犯人だとは思えない「僕」は、彼女のアリバイを見付けるため、時計屋探偵を訪れる。
- 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ
時計屋探偵の時乃が、祖父からアリバイ崩しを教わった幼少時代の話。
店の壁掛け時計が2時25分に止められたことが分かっているが、その時間祖父は別の場所で時計と一緒に写真に写っていた。フィルムカメラの時代で写真自体は修正はされていない。
祖父はどのような手段で時乃をダマそうとしたのか。
- 時計屋探偵と山荘のアリバイ
「僕」は休暇中に「時計荘」と呼ばれる山荘に訪れた。
雪の降る夜、「僕」は中学生の少年と語り、その後バーで遅くまで酒を飲んでいた。翌朝、山荘の横の時計塔の中で男の死体が発見された。
雪に残る足跡から考えると犯行が可能なのは中学生の少年だけだったが、どうしても彼が犯人だとは思えない「僕」は、時計屋探偵時乃の力を借りに行く。
- 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ
「お化け屋敷」と称されるほど荒れた家で、男が死んでいるのが発見された。犯人に辿り着くヒントが無いまま数か月が経過したが、家を取り壊そうとしたとき白骨化した死体が発見され、その身元が確認される。白骨死体となった男の息子が容疑者として浮上したが、彼にもアリバイがあった。
犯行が行われた当日、容疑者は「一日限り」でダウンロードが解放された楽曲を、その日にダウンロードしているところを友人が確認していたため、その時間の犯行は不可能だと考えられていた。
犯人の仕掛けを時乃が解き明かしていく。
感想・考察
安楽椅子探偵による本格ミステリだ。
探偵役が時計屋というのはなかなか変わった設定で、アリバイの「時間」に焦点を合わせた謎解きになっている。
本格度が高い分、現実にはあり得ないフィクションとなっているが、「これこそがミステリ小説」 という安心感をもって読める。
時計屋探偵 時乃 も、最後まで名前の出てこない刑事の「僕」も、なかなか魅力的なキャラクタなので、続編がでることを期待したい。