2035年の世界
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要約
いくつかの分野で2035年に起こっているかもしれない出来事を
高城氏が予測していく。
面白いと感じた項目をいくつか拾っていく。
1.身体科学
・超健康
病気を未然に防ぐ医療の進展で「超健康」が実現し、人間の平均寿命は140歳くらいまで伸びる。
・ボディ・エリア・ネットワーク
LANならぬBAN。リストデバイスや体内に埋め込まれてデバイスが生体情報を測定し異常を察知する。
・薬事ロボット
カプセル内視鏡などが進化し、体内の狙った場所に投薬できるような小型ロボットが実現する。
・未病とオミックス医療
遺伝子情報を元にした医療をオミックス医療という。遺伝子情報により病気を未然に防ぐ。
・遺伝子マーケット
優秀な遺伝子を持つ子供を作るための遺伝子が高値で取引されたり、他人のDNAを盗む犯罪も発生する。
2.科学
・脳ログ
脳内のマイクロデバイスで、見たものや考えたことを記録したり、外部と通信したりするようになる。
・オートマトン
シンギュラリティー以降、ロボットが拡大すると人間が仕事をしなくても良い状況が生まれる。「ロボット嫌い」の人へのセラピストなどは人間がしなければならない仕事として残るか。
・コンタクトデジカメ
コンタクトレンズのように眼球に装着するカメラ。最終的には視神経との接続。
・生体情報対応広告
マスに向けた「広告」から対象を絞った「狭告」に移る。生体情報を基にしたリアルタイムな広告が行われるようになる。
3.移動
・ハイパーボーダー
移動コストが急激に下がり、国境を越えて通勤する人が生まれる。
・宇宙旅行
宇宙旅行が身近なレジャーになる。
・医療ツーリズム
高度な医療を受けるためのツーリズムが盛んになる。また移動コストの低下から、低コスト医療のためのツーリズムも生まれる。
4.スタイル
・自分検索
「自分は何者か」という問いにAIが答える。スポンサー付きで。
・ケーブルカルト
布教の場所をインターネットに移したり教祖自体もバーチャルだったりするケーブルカルトが誕生する。
・デジタル・モダン・プリミティブ
デジタル化への反動として身体性に回帰する「モダン・プリミティブ」のカルチャーがあるが、肉体をテクノロジーで拡張したりする「デジタル・モダン・プリミティブ」へと進む。
・マスの崩壊
20世紀のマスメディアが「大衆」を作ったが、個人の情報発信力に依存するようになる。
・新リバタリアン
経済分野で市場原理主義を重視するリバタリアンに対し、個人の活動レベルでも政府の干渉を最小限にすべきとする新リバタリアンが生まれている。
・ガバメント・オプトアウト
生まれた国の政府に依存するのではなく、海外移住や資産の外貨への分散など、国と物理的に距離を置く生き方が広がる。
・スモークフリー&脱アルコール
各国でタバコからの解放が進んでいるが、次はハードリカー(強い酒)の規制が広がるとみる。
5.リスク
・人生100年時代「第二の人生」
人生が長くなり「定年退職後は年金で過ごす」という生き方が成り立たなくなる。60~70歳になっても健康な人が増え、そこから新たな活動をする人も増えていく。
・肥満問題
世界各国で肥満問題が健康への脅威となっている。健康のため砂糖やジャンクフードに課税する動きも始まっている。
・メガ都市とコンパクトシティ
中国を始め1000万人を超えるメガ都市が増えているが、スラム化を防止するため200万人程度のコンパクトシティが理想とされ始めている。
・水戦争
近い将来に水が石油などのエネルギー資源より貴重になる。特に中国とインド間でヒマラヤ水系を巡る争いが激化する。
6.政治
・リキッド化
世界はフラット化するが、フラットな状態で安定はしない。フラットになろうという力学が働きつつ常にダイナミックに動く「リキッド」状態になる。
・朱子学と陽明学
日本では「上に忠節を尽くす朱子学」と「実践を重んじる陽明学」が交互に力を持った。バブル崩壊後は「朱子学」優勢となっている。
・スマートパワー
軍事力などのハードパワーと外交や文化などのソフトパワーの二つを組み合わせ他国に影響を与える戦略のこと。近年の日本はハードパワーに軸足を置いている。
・成長しない世界
国家は「成長する」ことを前提とした仕組みだったが、今後は「成長しない」世界になっていく。インテレクチュアル・プロパティを充実させ、ロボットが働いてもお金が入ってくる仕組みを作ることが重要になる。
7.経済
・ハードリセット
近い将来に戦争や経済破綻などの形でのハードリセットが起こる。
・「グローバルとローカル」から「ユニオンとリージョン」
世界的な標準を作ろうというグローバルスタンダードの動きから、国に拠らないリージョンが連合するユニオン的な連携が主になっていく。
・テレビ局や宗教法人の合併
テレビ局や宗教法人など「聖域」だった業界の再編が起こる。
8.環境
・新氷河期
太陽活動の影響で2055年頃から氷河期に入る可能性が指摘されている。
・バイオとオーガニックのハイブリッド農業
気候変動による耕作地不足を補うため、遺伝子組換えを使ったバイオ農業は広がっていくが、同時に有機栽培で安全に育てる農法も行われる。
・電気のWiFi化
通信信号の無線化が進んでいるが、電源となる大電力も無線でつながるようになる。
感想・考察
移動コストが下がることで人の流動性が高まり、国に依存しない生き方が広がっていく傾向にあるのは間違いないだろう。
日本などは比較的流動性が低く、そういう流れを肌感覚で掴むのは難しいと思うが、動きが遅れるとそこに住む人々たちが不利益を受ける。
高城氏のような立場の人が情報発信を続けることは大事だろう。
あと「脳ログ」には徹底して反対したい。