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神様のカルテ2

神様のカルテ2

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あらすじ

365日24時間対応をうたう本庄病院で内科医として激務をこなす栗原一止。同じ病院に大学時代の友人である進藤辰也がやってきた。一止と辰也は将棋部で幾多の対局を持ち、後輩をめぐる三角関係を演じた間柄だった。

学生時代にはセオドア・ソレンソンの「良心に恥じぬことだけが、我々の確かな報酬である」という言葉を好み「医学部の良心」と呼ばれるほど真摯な姿勢を貫く辰也だった。だが本庄病院に来てからは主治医でありながら勤務時間外の対応を拒むなど、評判が悪く、一止は辰也の変化に戸惑っていた。またその時期に、本庄病院の内科を支える「古狐」先生が院内で倒れてしまう。 

感想・考察

夏目漱石を愛する一止の古風な語り口が、文章を少し固くしている。その文章が、雪山の荘厳さや、満天の星空の澄み切った美しさを、凛とした緊張感をもって伝えてくる。古狐先生の通夜で、青白い月光が棺と夫人と大狸先生を照らし三つの影を作る描写は、情景が鮮明に浮かび美しさに心が打たれた。

情景描写が硬質である一方、登場人物はみな優しく温かく、とても柔らかい。それぞれが迷いつつも真剣に生きている様子にもまた、心を打たれる。

自らも医師であった作者は、医師の過酷な労働環境の改善をテーマとしているが、末端にしわ寄せがいく理不尽さに憤りながらも「良心に恥じぬ生き方」を貫く医師たちの姿をたくましく描いている。

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