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サイコパスの真実

『サイコパスの真実」

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要約

1.サイコパスとはどのような人か

サイコパスの特徴

サイコパスの最大の特徴は「良心が欠如していること」
「トロッコ問題」は、何もせずに5人が死ぬのを見るか、あるいは5人を救い1人を殺すことを自分で選択するかを選択させる。
正しさとは何か」で議論を呼ぶ問題だがサイコパスであれば迷わず1人殺し5人救う方を選ぶという。人の命の重みを質的ではなく量として捉えるからだ。

以下の3つの因子がサイコパスの特徴。

対人因子
サイコパスには対人関係の持ち方に特徴がある。
・表面的には魅力がある
・他者を操作しようとする
・病的な虚言癖
・性的に放縦
・自己中心的で傲慢

感情因子
サイコパスの感情は他のパーソナリティー障害には見られないような特徴的なものだ。
・良心の欠如
・共感性や罪悪感の欠如
・冷淡さ、残虐性
・浅薄な情緒性
・不安の欠如

生活様式因子
先を考えず刹那的であるのが特徴。
・現実的、長期的目標の欠如
・衝動性と刺激の希求
・無責任性

反社会性因子
サイコパスの中でも反社会性因子が強いと犯罪を犯すことになる。
・少年期の非行
・犯罪の多種方向性

2.マイルド・サイコパス

サイコパスでも上記の特徴が全て揃うわけではなく人によって濃淡がある。その現れ方によっては社会に害の少ないサイコパスとなることもあり得る。

成功したサイコパス
刑務所に入るのは「失敗したサイコパス」だ。
実業家などに「成功したサイコパス」が見受けられる。
作者は、スティーブ・ジョブズやトランプ大統領を成功したサイコパスの例に挙げている。

サイコパスの良性/悪性
恐怖心の欠如や共感力の低さが「冷静に手術を行う優秀な外科医」となる可能性もある。
反社会性が低く能力が高い場合「良いサイコパス」となり、反社会性が高く能力が高い場合「成功したサイコパス」となる。反社会性が高く能力が低い場合「凶悪犯罪者」となる可能性がある。

サイコパスの類似観念
・反社会性パーソナリティー障害
 サイコパスに近い生活様式因子、反社会性因子を持つが、対人因子や感情因子は異なる。犯罪は犯しても必ずしも残虐性は有していない。

・自己愛性パーソナリティー障害
自分が特別な存在であると考えている。「他人を悩ませ、自分も悩む」タイプで、自分にも関心がないサイコパスにとは異なる。

・境界性パーソナリティー障害
他人に依存する傾向が強い。衝動性や他人を操作しようとする傾向はサイコパスに近いが、自分を認めて欲しいと「自分も悩む」タイプである点が異なる。

3.人は何故サイコパスになるのか

遺伝と環境
遺伝的要因による器質的な問題であるとする。
遺伝的要因を持った者が実際に発現するかどうかは環境の絵強もあるが、本質は先天的。

サイコパスの脳
残酷な場面の写真などを見せても、サイコパスの脳は反応しない。
注意力の配分ができず、集中すると他が気にならなくなる。
脳の内部では扁桃核が通常人より小さい。
ドーパミンの過剰分泌、セレトニンへの反応低下も見られる。
双生児の研究で圧倒的に遺伝の影響が大きいことも確認されている。

サイコパスの環境要因
遺伝的要因が大部分だが、実際に発現するかどうかは環境の影響もある。
ドーパミン過剰分泌、セレトニン感受性低下の遺伝子を持つ子供が、幼少期の虐待などを受けると攻撃性が高まるが、そういった遺伝子のない子供は虐待を受けても攻撃性は高まらない。

4.サイコパスは治るのか

暴力の歴史
先史時代の遺跡では15%の人は暴力により死んでいた。それが17世紀になると2%程度に低下。20世紀では第二次世界大戦を含めても 0.7%、2005年には0.0003%と 暴力の影響は低下している。

戦いが日常的だった世界では、恐怖を感じないサイコパスは「優秀な戦士」で社会にとって有益だった。その結果生き残ってきたが、今日相対的に平和な時代となり、社会で認められる機会が減少してきたと言える。

サイコパスの治療
「サイコパスの治療は極めて難しい」
「共同体治療」で治療を行った場合、非サイコパス群では再犯率が低下したが、サイコパス群では再犯率が有意に高くなった。
他者への配慮や社会的スキルについて学習したが、サイコパスはそれを次の犯罪に役立てていた。
通常の犯罪者に行うのとは別のサイコパスに特化した治療でないと逆効果になることもあり得る。

効果があったのは、「認知療法的アプローチ」と「SSRIなどの薬物療法」だった。また若年期の方が治療効果が高いことも確認された。

身近なサイコパスへの対処
・むやみに近寄らない
・表面的な言葉をうのみにしない
・会う必要があるときは複数である
・個人的なことは話さない
・本人の経歴などは客観的証拠だけを信じる
など。

5.サイコパスとわれわれの社会

サイコパスをどのように扱うか、いくつかの問題を提起している。

サイコパスの責任能力
サイコパスは先天的なものであることから、精神障害者のように責任能力が無いものとして罪を問わないとすべきか。

ラディカルな予防対策
ハイリスクなサイコパスに対しては、刑事罰の範囲を超えて拘束することが認められるべきか。
サイコパスの遺伝的要因をもつ者は子供を持つことを禁止するのは認められるか。

感想・考察

かつてサイコパスは「恐怖を感じない優秀な戦士」だったのだろう。
比較的平和な時代になり、直接的な戦士の必要性は減ったのかもしれないが、現代でも、他者を恐れない冷徹さで世界を変えたスティーブ・ジョブズなど「有益なサイコパス」もいる。

大局的にみれば、サイコパス的な偏った人がいることで、世界が活性化していると言える。無条件に排除してしまえば世界は多様性を失って活力が落ちてしまうだろう。
サイコパスというのが「遺伝の影響が大きい器質的な問題」であるなら、教育で改善することは期待できない。だとすれば、優生政策的に排除することが必要なのかもしれないが、物理的に多様性を刈り取ってしまうことで環境変化に弱くなってしまう可能性もある。

一方、個人的な視点でみれば、無差別殺人を行うようなサイコパスを放置しておくことは許容できない。自分自身や大切な人を傷つけられるのは絶対に許せないからだ。

極めて重たい課題提起がされている一冊だ。

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