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仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方

『仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方』

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要約

大掛かりな装置を使うのではなく、人の行動を誘発する「仕掛け」を使い目的を達成する「仕掛学」についての本。

例えば「バスケットゴールの付いたゴミ箱」が、ちゃんとゴミ箱にゴミを捨てる行動を誘発したり、「的のついた男子小便器」の効果でトイレをきれいに使ってもらえるなどが「仕掛け」だ。仕掛け自体が問題を解決するわけではないが、仕掛けが人の行動を誘発し、結果的に目的を達成させる。

著者は仕掛けの基準としてFAD要件を挙げる。「公平(Fair)」で、「行動を誘発する力(Attractive)」があり、「仕掛ける側と受ける側で目的が異なる(Duality)」を満たしたものを「仕掛け」とかなり限定的な定義で使っている。

仕掛けによってもたらせる便益(嬉しさなど)の大小と、仕掛けにのって行動するときの負担の大小によって、反応の強弱がことなる。

例えば、階段をピアノ鍵盤に模して音を出す仕掛けは、階段の上り下りで生じる負荷は大きいが、音が鳴る楽しさも大きい。この場合、最初のうちは行動を促す力が強いが、そのうち飽きられてしまう。

また、男子トイレの的は負担は少ないが、得られる便益も大したことがない。行動を誘発する力は弱いが、維持コストをかけずに長期間継続することはできる。

観光地やイベントなど、回数は少なくても強い吸引力が欲しい場合と、行動を継続的に変化させたい場合とで、負荷と便益のバランスを最適化していく必要がある。

仕掛けには、物理的トリガと心理的トリガがある。

例えば、道の小さな鳥居でゴミのポイ捨てを防止する仕掛けでは、「鳥居」という物理的トリガが、「罰が当たらないように」という心理的トリガを生んでいる。

物理的トリガには、五感にフィードバックを与えたり、アナロジーからフィードフォワードを引き起こすものがある。アナロジーによるフィードフォワードというのは、例えば、ピアノ風に配色された階段を見て「音が鳴るかも」と類推させることをいう。

心理的トリガは、「個人的文脈」と「社会的文脈」に分けられる。

個人的人脈にあは「いいことがあるかも」というポジティブな期待、「悪いことを避けたい」というネガティブな期待、報酬、挑戦、自己承認などがある。例えば、ピアノ風階段は「音が鳴ったら楽しそう」というポジティブな期待をトリガにしている。

また「社会的文脈」には、「誰かに見られているかも」という被視感、「決まりに従おう」という社会規範、逆に行動による生まれる社会証明に分けられる。

駐輪場に白線があれば、それに合わせて駐輪するのが「社会規範」、自転車のカゴにゴミが捨てられていると、後から来た人もそこにゴミを捨ててしまうのは「社会証明」によるものだ。

これらの、トリガを組み合わせて仕掛けを考えていくことができる。

仕掛けを思いつくための手法も色々ある。

こどもの発想は自由で、見立てが上手なので参考になる。

また人の行動を観察することで、行動誘発のヒントを得ることができる。

アイデア出しには「オズボーンのチェックリスト」も有効。
・他の使い道は?
・他に似たものは?
・変えてみたら?
・大きく/小さくしてみたら?
・代用してみたら?
・逆にしてみたら?
・組み合わせてみたら?
という観点からアイデアを出していく。

感想・考察

何かを変えようとすると、大掛かりなプロジェクトを組んだり、高額な装置を導入することを考えてしまいがちだ。

だが、人間が関わる部分であれば、人間の行動を変えることで「結果的に」目的が達成できることはあり得る。

自分自身の目的を達成するときでも、大掛かりな対策が必要なこともあるが、自分の行動を変えるような負荷の低い仕掛けで、習慣を変えてしまうことが有効なのかもしれない。

とりあえず、本書に紹介されている「仕掛け」の数々が面白いので、そこから横展開するだけでも、新しいものが作り出せそうだ。

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