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カミーラ

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あらすじ

19世紀、オーストリア辺境に暮らすローラの手記に残された物語。

父と古城で暮らしていたローラは、幼いころにベッドで美しい女性の姿を見た。彼女はローラのベッドに入り込み、ローラは胸を刺されたような痛みを感じる。ローラの悲鳴を聞いた女中が部屋を調べたが、その女性の姿はなく、ただベッドに人がいた形跡だけが残っていた。

数年後、19歳になったローラは父の友人である将軍とその姪が訪れることを楽しみにしていたが、姪が急逝して来訪はなくなってしまった。姪を深く愛していた将軍は取り乱しているようだった。

その頃、ローラたちの居城の近くで馬車が転倒する事故が起きる。馬車に乗っていた少女カミーラは気を失っていたが、その母親は緊急の要件があり、すぐに旅立つ必要があるという。
カミーラの母親は彼女を近くの町まで送ってもらえるよう頼んだが、ローラは父に彼女を城で預かることを懇願した。母親は用件が済んだら迎えに来ることを約束し旅立っていった。

カミーラはローラが幼いころに見た美しい女性の姿そのものだった。カミーラも幼いころにローラと出会う夢を見たと言う。二人は惹かれあい一共同生活を始める。

カミーラはあまり体力がなく毎日昼過ぎまで寝ていた。食べ物も口にせずホットチョコレートを飲むくらいだった。心配性で眠るときには必ず部屋の鍵をかける習慣もあった。

カミーラが訪れてから数日たったころ、眠っていたローラは動物に襲われる夢を見て、胸を刺されるような痛みを感じた。飛び起きたローラは部屋にカミーラのような女性がいるのを見たが、すぐに彼女の姿は消えてしまう。
使用人たちとカミーラの部屋を調べると、中から鍵がかかっていて、無理やり扉を開けると中には誰もいなかった。
翌日の昼過ぎになってカミーラは自室に現れ、ローラの父はカミーラは夢遊病であると結論付けた。

その日からローラは徐々に精力を奪われるように弱っていった。父はローラを医者に診せ、古い城跡に行くことを決める。

城跡に向かう道中で姪を亡くした将軍と出会う。将軍は姪が亡くなる前に預かったミラーカという少女のことを告げる。ミラーカの振る舞いはカミーラと全く同じで夢遊病のように深夜に彷徨うことがあったという。将軍の姪も、ある夜胸を刺されたような痛みを覚えたあと徐々に弱っていき死んでしまったという。

将軍はミラーカの正体は1世紀以上前に死んでいるマーカラ伯爵夫人であるという。

マーカラの墓があるという城跡に辿り着いたとき、突然カミーラが現れた。

感想・考察

ドラキュラ伝説の一つだが、ホラー的に驚かすような怖さはない。ストーリーの流れでじわじわと追い詰められ、安心できる場所が削られていくような種類の恐怖が描かれている。
百合要素の強い耽美的な描写も、好きな人には魅力的に映るのだと思う。

また19世紀のアイルランドの作品だけあって、キリスト教の宗教色がとても強いとも感じた。

葬式で歌われる讃美歌はカミーラを苦しめるが、旅芸人の売る「吸血鬼除けのお守り」には全く効力がない。神を賛美する心には力が宿るが、形だけのお守りには無力だということだろう。
また「自殺した者は条件が揃うと吸血鬼になる」というように、自殺を重い罪と考えているのも、キリスト教の影響が強いと言えるだろう。

最近のホラーでは、忖度があるのか特定宗教に深入りすることはないし、宗教的なアイコンもメタファーとして使われることが多い。西欧諸国では今もキリスト教が主流だが、ここ200年でその態度はずいぶん変わってきたのだと感じる。

逆に日本人は無宗教だと自覚している人が多いのだと思うが、根っこにある素朴な自然信仰のようなものは、あまり変わっていないようにも感じる。

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