BookLetでは、ビジネス書や小説の1000文字程度のオリジナルレビューを掲載しています。

臆病者のための億万長者入門

臆病者のための億万長者入門

こちらで購入可能

要約

個人投資家はリスク耐性が低い。人生における経済的なリスクを管理し、予測不能な経済的変動から家族や自分を守る「臆病な投資術」を解説する。

人的資本と金融資本
人が持つ資本は、働いてお金を稼ぐ力である「人的資本」と、不動産や年金を含む金融資産である「金融資本」がある。
一般的には若い時には「人的資本」が多く金融資本は少ない。高齢になると人的資本は目減りしていき、金融資本は人により差が出てくる。

金融資本を運用することも大事だが、それ以前に「人的資本の運用」を真剣に考える必要がある。

スキルを上げ、人的資本の「投資利回りを上げる」のは自己啓発本などで論じられているが、働く期間を延長することで「人的資本の運用期間をできるだけ長くする」ことが人生全体で見て影響が大きい。
健康を維持し働ける期間を延長すること、労働市場の中で自分の価値を高め、年齢に関わらず稼げるようになることが重要だとする。

金融商品は理不尽
「宝くじ」は還元率50%程度で極めて期待値の低いギャンブルだ。一般の金融商品であれば規制を受けるが、国が胴元となるギャンブルではリスク説明責任もなく、射幸心をあおる仕組みになっている。
確率で考えれば分が悪いのに「自分には特別なことが起こる」と考えている人に資産運用はできない。

同じように確率を見えにくくしているのが生命保険。貯蓄要素を混ぜることで保険の部分で得をしているのか損をしているのかが見えにくくなっている。実際には平均寿命より早く死なない限り「損をしている」ということになる。
優れた健康保険制度がある日本では、医療費自体より病気による無収入期間に対する備えが重要で、それには保険よりも貯蓄やそのほかの運用の方が有利だ。

情報は非対称で、儲かる情報は外部に出てこない。金融機関の人間にとって顧客お金より自分の利益の方が大切だ。
金融機関が持ってくる話はすべて断るのが正解

株式投資は世界株インデックスファンドをドルコスト平均法で
「株価が決まる仕組み」には正解があり中長期的にはそこに収束していく。
単純にいうと「株価は、将来の利益総額を現在価値に換算したもの」である。将来の動きは分からなくても「今の株価が高すぎるか安すぎるか」は判断できる。

ただ将来の株価は確率的にしか分からず、有能なファンドマネージャーの成績も平均すると「チンパンジーがサイコロを振った結果」にかなわない。

個別銘柄への投資判断は難しいが、資本主義が崩壊しない限り「市場全体の規模は拡大していく」と考えられる。「市場全体のインデックスを基準としたファンド」が、リスク耐性の低い「臆病者」に適している。
また市場全体のインデックスがゼロになることは考えにくいため、下落時に多く買うことのできる「ドルコスト平均法」が相性がいい。

為替は長期的にはバランスされる
インフレ率の高く金利が高い通貨は安くなり、デフレ時で金利の低い通貨は高くなる。
利率の高い外貨預金があったとしても、期間中のインフレ率やカントリーリスクを考えると、結局はどこも大差はないということになる。そうでないことがあれば、そこに資本が集中し結局は値を下げることになる。

短期的に見れば為替変動は大きいが、結局はインフレ率と相殺されバランスされるので、為替リスクを恐れる必要はない

不動産投資は損
金融資本であれば不利な状況で手放すことも容易だが、不動産は例えば住んでいる家が災害にあった場合など致命的なリスクとなる。リスクを避ける「臆病な投資」には向かない。

「賃貸よりも持ち家の方が得」という理論は突き詰めると「借金した方がしないより得」という意味だ。借金によって資産運用にレバレッジをかけることができ、また一般人にとって大きな借金ができるのは住宅購入のタイミングぐらいだということがある。
例えば、4000万円を借りて家賃25万円/月相当の家を買うのは、家賃を払い続けるより得なように見えるが、4000万円を借りて年6%の配当のある株式を購入しても同じことだ。

不動産価格自体が高騰すれば資産価値は増すが、人口が減っている日本では長期的には住宅需要が高騰する可能性は低い。
株などの金融市場と比べると不動産市場の情報は非対称で、やはり個人投資家にはリスクが高いと言える。

感想・考察

大手企業や資産家と比べて、一般の個人投資家はリスク耐性が低い。だからこそ「臆病な戦い方」をする必要があるという主旨だ。
実に分かりやすくまとまっている。

実践しようと思うのは
① 健康に気を使い、長く稼げるように。
② 金融機関が勧めてくる商品には手を出さない。
③ インデックスファンドをドルコスト平均法で積み立てる。
④ リスク分散のためには外貨の比率を上げる。
といったあたりだ。

まあ「自分の頭でゆっくり考えろ」と言っているので、本書の内容も鵜呑みにするのではなく、よく考えながら自分の環境に合わせてベストな方法を探っていくことにしよう。

こちらで購入可能

コメント