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戦場のコックたち

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あらすじ

第二次世界大戦末期、アメリカからヨーロッパの戦地に赴いた兵士たちの物語。コックとして従軍する特技兵たちが、戦場で起きる謎を解いていく。

ルイジアナ州出身のティム・コールは志願兵として訓練を受けるが、同年代で中隊コックのリーダーであるエド・グリーンバーグから勧められ、コックとして従軍することを決める。

第1章 ノルマンディー降下作戦
ティムたちの部隊はノルマンディー降下作戦に参加。パラシュートでフランスノルマンディー地方に降下し、ドイツ軍に支配されていた地域を開放していった。
後方支援部隊であるティムたちは、現地人から城を借りて補給業務を行った。

同じ部隊の機関銃士であるライナスは、どこからか入手したアップル・シードルと交換で使用済みのパラシュートを集めていた。いったい何のため、誰のためにそんなことをしているのか、エドが推理していく。

第2章 軍隊は胃袋で行進する
補給物資の中から大量の「粉末卵」が消えた。
見張りをしていた兵士が何も見ていないという証言もあり、受け渡し時の食い違いとして処理されたが、食糧研究開発局の少佐が責任を追及しようとする。
真相に至ったエドは「お前なら黒人の言うことと白人の言うことのどちらを信じるか」と問い、一枚の警告文を貼りだした。
粉末卵は誰が何の意図で盗んだのか。

第3章 ミソサザイと鷲
ティムたちはベルギー国境に近いオランダ南西部に降下し、後続部隊の到着を待ったが、ドイツ軍に阻まれ孤立する。
オランダ人の玩具職人の家を拠点とし借り上げていたが、そこでも激しい戦闘が起こり、何人もの仲間が死んでいった。
戦闘の最中、玩具職人の夫婦が隠れていた地下室で死んでいるのが発見された。遺書は残されていたが二人とも祈るように両手を組んでいたため心中ではなく第三者がいたと判断され、敵が内部に潜んでいる可能性に緊張が走る。
ティムたちは残された幼子二人を抱えながら、心中の真相を推理する。

第4章 幽霊たち
クリスマス時期、極寒のベルギーでコック仲間のディエゴは、塹壕の中で「幽霊の音を聞いた」と怯える。そこにはドイツ軍の残存兵が潜んでいる可能性もあった。
エドやティムが調べていると隣の部隊の兵士を見かけたが、後から確認すると、その兵士は数か月前に死んでいたことが判明する。

第5章 戦いの終わり
ドイツ軍の戦線が崩壊し、連合軍がドイツ本土に突入する。同じころソ連の赤軍も東方面から進軍していた。
戦局の状況を聞き、ティムたちと行動を共にしていた衛生兵ブライアンが動揺し始める。

感想・考察

戦場という非日常で起きる「日常系ミステリ」として始まるが、徐々に戦争そのものと深くかかわる「重たい謎」に移っていく。

ティムは戦争によって人生を狂わされた人や、死んでいった仲間たちをみて、戦うことに疑問を感じる。
だが、戦場で疑問をもって立ち止まってしまえば、死が待っている。生き残るためには、とにかく走り続けるしかない。そういう緊張が精神を高揚させ、戦いを憎みながら戦いに惹かれていく。

エドはティムに対して、「罪を犯した奴を攻めたい気持ちと、庇いたい気持ちがせめぎ合って、ボロボロになる。そういうお前が、俺にとっては良い人間に思えるんだ」と言っている。


戦争は悲劇を生む。
だが戦争には「メリット」もある。
敵は邪悪な存在だ。
だが敵は邪悪であろうとしているわけではない。
前線の兵士を安全圏から操る人間は憎々しい。
だが彼らは自分が守るべきものを守ろうとしているだけだ。

「正しいこと」は相対的で立場が違えば無意味なのかもしれない。
それでも「正しいことをしようと真剣に格闘すること」が必要なのだろう。
判断をつけることができない複雑な世の中で、自分の正義を見つけるために足掻くこと自体が「正義」なのだと思う。

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