BookLetでは、ビジネス書や小説の1000文字程度のオリジナルレビューを掲載しています。

掟上今日子の裏表紙

掟上今日子の裏表紙

こちらで購入可能

あらすじ

一日ごとに記憶がリセットされる「忘却探偵」掟上今日子シリーズの第9弾。

「忘却探偵」掟上今日子は強盗殺人容疑で逮捕される。かつての操作で関わった日怠井警部が取り調べるが、掟上は日怠井に「自分が無実であることを証明する調査」を申し出る(有償で)。

強盗殺人の被害者は、メガバンク創立家の一員で、屋敷に引きこもりながらコイン蒐集を趣味とする40代の男だった。
彼は自宅にある厳重に施錠されたコインの展示室で胸を刺され殺されており、その横で掟上が被害者の血が付いた凶器を手にして眠っていた。翌朝になり姿の見えない被害者を探していた使用人がドアを破壊して事件を発見したという。

眠ってしまった掟上は事件のことを記憶していなかったが「調書を見る限りでは私の犯行のようです」としながらも「この調書は矛盾だらけ」だという。

日怠井も掟上の犯行とは思えず、彼女に誘導されるように「忘却探偵の専門家」である隠館厄介と連絡を取り意見を聞く。
「冤罪製造機」の異名を持つ日怠井は、かつて「冤罪体質」である隠館を誤認逮捕し、掟上の捜査によって冤罪を免れたという経緯があり、日怠井・隠館双方にとって気まずい面会だったが、真実の追求のためお互いに歩み寄った。

隠館は日怠井に「今日子さんは嘘をついている」と告げた。

忘却探偵の常連客であり助手でもある隠館の視点と、掟上に振り回されながらも誠実に操作に取り組む日怠井の視点が交互に展開され、物語は進んでいく。

感想・考察

掟上今日子のミステリアスな悪女感が際立つ話だった。
今回は常連の隠館と日怠井警部の二人が、掟上の情報戦術に振り回される。
9作目になり忘却探偵としてのキャラ設定も固まり、地の文と台詞が混ざるような叙述トリックであれば反則となりそうな文体も馴染んできたり、シリーズとして脂がのっている感じ。文章の流れは天才的だと思う。

シリーズを重ねれば重ねるほど、掟上今日子が眠るごとにすべてを忘れているとは思えなくなってきた。
一日ごとに記憶がリセットされる「忘却探偵」という設定自体がシリーズをまたいだ壮大な叙述トリックなのだろうか。考えてみれば「地の文」で記憶がリセットされると書かれているわけではなく、関係者の視点もしくは、掟上今日子本人のセリフで述べられているだけだ。
このシリーズは追いかけていこう。

こちらで購入可能

コメント