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明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

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あらすじ

澄川家の3人の子供たちの視点から見た、家族の崩壊と再生の物語。

長男の澄生と長女の真澄がまだ幼いころ、母親の美加は離婚し澄川誠と再婚した。誠には連子の創太がいて、またその直後に末妹の千絵が生まれたため、澄川家は5人家族になった。

美加は家庭を整えることを愛し、完璧に幸せな家族が出来上がっていった。

澄生は母からの深い愛を受け周囲に一目置かれる存在となり、真澄は落ち着いた視線で家族を見つめ支える。
創太は血の繋がらない母の関心を引くことに必死になり、家族全員と血のつながりを持つ千絵は天真爛漫な少女に育っていった。

だがある日、澄生が雷に打たれて死んでしまう。

澄生を自分の一部のように感じていた美加は、その死を受け入れられず徐々に精神を病んでいく。やがてアルコール依存症となり入退院を繰り返すようになる。

真澄は母親の代わりとなって家族を支え、のちには大学への進学をあきらめ事業に躓いた父を助ていった。

創太は必死に母親を支えようとするが、自分では美加にとって澄生の代わりにはなれないことを思い知らされる。母親の愛情を求めたのか年上の未亡人との不自然な恋愛関係にはまり込んでいった。

千絵は、澄生の伝説が残る学校でいじめの対象となり心をすり減らしていた。だが創太の友人である男性と付き合い始めてから、いじめを意に介することがなくなっていく。

美加を刺激しないよう、澄川家では命日に澄生を偲ぶこともく、家族の誕生日なども盛大に祝うことはなかった。

千絵は、いつまでも年を取らずに澄川家に留まり続ける澄生の誕生日を祝い、澄生を成長させ、家族を前進させることを提案した。

感想・考察

人間関係は最初からそこにあるわけじゃなく、努力して作り上げていく側面があるのだろう。不器用に足掻きながら「家族を取り戻そう」とする子供たちの様子に心が動かされる。

さまざまな層での人間関係と相対していかなければならない生活の中で、身近であるべき家族との関係にまで意識的であるというのは実に息苦しい。できることなら、せめて家族に対しては、気をつかわず自然体で向き合いたい。

だけれども、家族がいつも順風満帆であるとは限らない。そこに綻びがあったとき、放置するのが良いこともあれば積極的な働きかけが必要なこともある。
身近な人間関係だからといって粗雑に扱えば壊れてしまう。頑張らなきゃいけないこともあるのだ。

「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」という曾祖母の辞世の句には、色々なことを乗り越えたカッコよさを感じた。

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