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あなたの思い出紡ぎます 霧の向こうの裁縫店

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あらすじ

宇山真琴は祖父から老舗の仕立屋を受け継いだが、とある事情で店を手放してしまう。一文無しになった真琴は祖父の残した言葉に従い「鳥居の見える裁縫店」を訪れた。
真琴の知る先代はすでに亡くなり、彼女と同年代の鳴瀬が店主となっていた。
そこは彼岸と此岸を縫い合わせ「一度だけ死者と会える裁縫店」なのだという。
真琴は幽霊の少年ヨシオとともに、鳴瀬裁縫店に住み込みで働くことを決める。

我が子に紡ぐ物語
早乙女千里は8歳の娘を交通事故でなくしてしまう。
塾への送り迎えをしなかったこと、脳死判定で臓器提供に同意してしまったことなどを悔やみ続け、生きる気力を失っていた。
千里はかつて見かけた死者と巡り合える裁縫店の話を思い出し、わずかな期待をもって訪れてきた。
鳴瀬は、千里の持ち物と死んだ娘の持ち物を縫い合わせ、糸が切れるまでの短い間だけ娘を現世に呼び寄せた。

妻に紡ぐ物語
源田功の妻はアルツハイマーを患い交通事故にあって死んでしまった。
その後、功自身も物忘れが激しくなり生活に困難をきたすようになり始める。
妻の残した「死者と会える店」のメモを頼りに、功は鳴瀬裁縫店を訪れた。功には妻にあって聞きたいことがあったのだ。

恋人に紡ぐ物語
高校教師の橋爪孝好は、自分が働く高校の生徒と小宮山舞と付き合っていたが、好条件の見合い話がきて彼女を振る。失意の舞は橋爪の目の前で飛び降り自殺してしまった。
厄介払いができたと考えた橋爪だったが、死んだはずの舞の筆跡で「会いに来てくれなければ、遺書を公開する」という手紙を受け取り、怯えながら鳴瀬裁縫店に訪れた。

君に紡ぐ物語
宇山真琴の物語。
祖父から老舗を受け継いだ真琴が店を手放し一文無しになってしまったのはなぜなのか。幽霊のヨシオが真琴を以前から知っているようなそぶりを見せるのはなぜなのか。

鳴瀬に紡ぐ物語
最終話は、裁縫店の店主 鳴瀬の物語。
幼いころから霊能力を持つ鳴瀬は、知らぬ間に母親を追い詰めていた。鳴瀬の両親は離れていき、彼は祖父に育てられてきた。
両親に見捨てられた悲しみ、母親を追い詰め傷つけた苦しさから、鳴瀬は自分の代で霊能力者としての鳴瀬家の血を絶やすことを決意していた。

感想・考察

温かくて優しいオカルトファンタジー。読んでいて心地いい。

死者と時間限定で再会できるような設定は、高確率で涙腺を崩壊させてくる。
二度と会えない人が、限られた時間の中で自分のことを考え、何かしてくれることは、とても貴重でかけがえのないものだと感じる。

でも本当は、生きている人の思いも、その時一回限りのかけがえのないものであることに違いはないのだとも思う。

一期一会の心を忘れずに生きていきたいものだ。

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