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櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み

櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み

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あらすじ

骨を愛する九条櫻子と、彼女に巻き込まれる高校生の館脇正太郎のお話。
櫻子さんシリーズの第2弾。

夏に眠る骨
鍾乳洞の見学に訪れた櫻子と正太郎は山道で白骨死体を発見する。
櫻子は骨の状況から、前年秋ごろに崖から転落した高齢の女性と判断した。

後日、正太郎と同じ学校の 鴻上百合子が、遺体が彼女の祖母のものだったため、発見した正太郎にお礼を言いに来た。

警察では、百合子の祖母は認知症を患った祖父の介護に疲れ自殺したと判断していた。百合子は櫻子と正太郎と一緒に改めて遺体の発見現場を訪れ、祖母の死の真相に迫っていく。

あなたのおうちはどこですか
北海道でクーラーがある家は少ないが、暑い日は暑い。扇風機が故障したため、正太郎は深夜のコンビニに冷たいものを買いに出かけた。

そこで正太郎は、2~3歳の子どもが一人で道路を歩いているのを見る。幹線道路に入ろうとした子どもを助け、迷子として交番に連れていった。
その子どもは「いいちゃん」と名乗ったが、住所などを聞き出すことはできなかった。いいちゃんの身体には本人のものではない血が付着しており事件性もあったため、正太郎は警察官と一緒に彼女の家を探しにいった。

正太郎は櫻子さんの知恵を借り、いいちゃんの足取りをつかむことに成功した。

殺されてもいい人
櫻子の友人 薔子の祖父 藤堂清治郎が卒寿を迎え、記念パーティーが開催された。親類を苦手とする薔子の頼みで、櫻子と正太郎もパーティーに参加することとなる。
90歳にしてなおバイタリティー溢れる清治郎は、いまだ女性関係にルーズで、子どもや孫たちに軋轢をもたらしていた。

翌日の朝、清治郎が自室で死んでいるのが発見された。

警察は病気による自然死だと判断したが、遺族たちにはそれぞれ清治郎を殺す動機があった。

感想・考察

「人の真意」を周りの人が本当に理解することはできない。

1話目の祖母は、介護に疲れて自殺したのかもしれないし、自分を鼓舞しようとして事故にあったのかもしれない。
2話目の母親は、幼い子こどもの育児を放棄していたかもしれないが、身を挺して我が子を守ったのかもしれない。
3話目の妻は夫の浮気を憎んだかもしれないし、喜んでいたのかもしれない。

一緒に生活していても、その人が持っている「幸せの基準、正義の基準」が、自分と同じだとは限らないし、むしろズレているのが当然だ。

櫻子さんはシニカルに醒めているようにも見えるが、自分とは違う他者を認め尊重しているということなのだろう。

カッコいい。

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