櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘
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あらすじ
「櫻子さんの足元には死体が埋まっている」シリーズ第3弾。
骨を愛するお嬢様 九条櫻子と、彼女に振り回される男子高校生 館脇正太郎が謎を解く3つの短編集。
呪われた男
九条櫻子と館脇正太郎は、以前の事件で知り合った警察官内海の紹介で「呪いがかけられた」という藤岡の元に訪れた。
藤岡は亡くなった親類から犬を引き取ったが、その犬の飼い主はみな死んでいるという。彼自身も最近急にその犬に懐かれ死を予感していた。
また藤岡の家系は代々短命で、特に男性は若くして亡くなる人が多かった。その死因も原因不明の心不全から、がんや事故など様々だった。
更に彼の書斎には数世紀前に描かれた「呪いの絵」も飾られていた。
櫻子は「呪いなど非現実的」だとしてその原因を突き止めたが、その裏には「人の意志」が隠されていた。
お祖母ちゃんのプリン
正太郎は、櫻子と九条家のばあやに、亡くなった祖母が好きだったプリンの話をした。
正太郎は、末期がんに侵され入院していた祖母のお見舞いに頻繁に訪れていたが、祖母は毎回特定の店のプリンを希望した。
以前は料理人だった祖父の作った固めのプリンを好んでいたが、入院してからはその店のやわらかいプリンが欲しいと言うようになり、正太郎は少し遠まわりになるその店に行って毎回プリンを買っていた。
ばあやはその話を聞き「正太郎の祖母はそのプリンが食べたかったわけではない」と言った。
託された骨
櫻子は正太郎の通う高校の文化祭に訪れた。
櫻子が理科室の標本に見入っていると、生物教師から「亡くなった教師の残した骨格標本の整理を手伝って欲しい」と頼まれる。
作業をしていた櫻子たちは標本の中に「人間の骨」が混じっているのを発見した。警察の捜査の結果、その骨は亡くなった教師の実家の使用人のものだと判明し、自然死であり事件性はないとされた。
櫻子と正太郎は、部屋で発券した教師の遺品をもって彼の姉を訪れ、当時の話を聞いた。
感想・考察
シリーズ3作目にして、作品の色がはっきりしてきたように思う。
「けれどこんな風に彼女の過去を暴くことに、いったい何の意味があるのだろう?」という正太郎の問いかけ、「真実は必ずしも一つであるとは限らない」という櫻子さんの言葉。
謎解きの面白さよりも、こういう距離感が心地いい。
何が起こったのか現象を突き止めたとしても、本当のところ因果関係を「心の中で何があったのか」を、他人が推察することはできない。解釈する人の数だけ真実はある。
決めつけない自由さを失わないようにしたい。