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雀蜂

雀蜂

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あらすじ

山荘にこもって執筆していた小説家の安斎がある朝目覚めると、妻 夢子の姿がないことに気づく。几帳面な彼女にしては珍しくバスローブを脱ぎ散らかし、床にはワインがこぼれていた。

思案していると部屋にスズメバチが入り込んできた。
以前ハチに刺されアレルギー反応を起こした安斎は、アナフィラキシーショックを怖れパニックに陥る。
雪の積もる晩秋の山荘でハチが活動しているのは不自然だ。携帯電話や車のキーはなくなり、ネット回線も切られ助けを呼ぶことはできず、コートも無くなっていたため吹雪の中を歩いて逃げ出すこともできなかった。
その状況から安斎は、姿を消した夢子が知り合いの昆虫学者と共謀し仕組んだものだと考えた。

安斎は「一匹残らず駆除してやる」と、スズメバチと格闘していく。

スズメバチとの戦いに苦しむ安斎は、なぜ夢子が自分を殺そうとしたのか考えた。自身の著作と妻が著した絵本のストーリーを思い出し理由を探していく。

感想・考察

前半はスズメバチとの格闘の緊迫感に引っ張られ、中盤から安斎と妻の書いた本の内容に触れるメタ的な展開に引き込まれ、最後はぐるりと回るどんでん返しで驚かされる。
「ホラーは幽霊よりも人間よりも、昆虫が怖いな」と思わせておいて「やっぱり人間怖えー。。」と思わされた。


働きバチは生殖能力を持たず、自分を守ることよりも集団を守り拡大することで血縁度を上げる使命を果たす。
商品先物のセールスマンをしていた安斎は、会社のために自分を捨てる同僚たちをみて働きバチのようだと感じながら、圧迫感に耐え忍んでいた。
そんな時安斎の小説にある「どうせ一度きりしかない命なんだ。スズメバチだって、自由に翅を広げて飛んでいけばいいんじゃないかな。ひたすら飛びたい方へ向かって」という一節に心惹かれていたのだろう。
だけれども、ただ「ひたすら飛びたい方へ向かって飛ぶ」だけでは、行きたいところに辿り着くことはできないのかもしれない。

狙い通りブラックな気分になるサスペンスホラーだった。

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