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生きてさえいれば

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あらすじ

小学生の千景は、心臓病で入院している叔母の牧村春桜が大好きだった。
彼女が大切に持っていた「羽田秋羽」宛ての手紙を届けるため、東京から大阪まで一人で新幹線に乗って旅立った。

時は戻り春桜と秋羽の大学時代の話。
春桜は大学時代にモデルとして活躍し学校内のアイドルだった。2学年下に入学してきた秋羽は、春桜の所属するサークルに入り、初対面の彼女からいきなり求婚された。

春桜は「自分春桜と姉の冬月を繋ぐには『夏と秋』が必要」だと言った。名前に秋と夏を含む秋羽とその妹の夏芽と親しくなることを切望し、秋羽に積極的なアプローチをかける。
同学年の女性に惹かれていた秋羽は、最初は春桜を拒絶していたが、やがて二人は同棲し付き合い始める。

ある日、秋羽の家族が自動車事故を起こしたという連絡が入る。
秋羽は急遽故郷に向かったが、両親は即死しており妹の夏芽も半身不随となっていた。秋羽は東京に戻らず、大阪に残って夏芽と暮らすことを決意する。

秋羽の元を訪れた春桜は、秋羽の幼馴染に追い返されて彼に会えずにいた。
秋羽の家族を不幸にしたのは自分の責任だと感じた春桜は、彼から身を引いた。春桜は秋羽の子どもを身ごもっていたが流産してしまい、その後心臓病が発症し入院生活が始まってしまう。


再び数年後の話に戻る。
千景を通して春桜の手紙を受け取った秋羽は、春桜に会うため東京へと向かった。

感想・考察

「名前で春夏秋冬を揃えるために付き合うとか、ないだろ!?」とは思った。

とはいえ、両親の愛情を得られなかった姉や兄と、姉や兄から冷遇されながら執着する妹や弟という関係は普通にある。春桜と秋羽はその関係が捻じれて繋がったものだと思うと理解できる。
そして、きっかけは歪な欠損感覚だとしても単なる一目惚れだとしても、真摯に関係を続けていけば「愛にして見せる」こともできるのだろう。

学校でのいじめを苦にして命を絶つことを考えた千景は「生きているから、苦しみや悲しみがある」という。
だが、欠損を埋めようとした欲求を愛に変え、病と闘い、絶望を乗り越えてきた春桜の生き様は「生きていなくちゃ、悲しみや絶望は克服できない。生きて時間を進めなければ、感動や喜びや恋に出会えない」ことを千景に伝えた。

「生きてさえいれば」自分で時間を進めることができる。
作者自身が、少女時代から不治の病と戦い、若くして亡くなっているという経緯を知っている分、メッセージが重く伝わる。

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