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純喫茶トルンカ

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あらすじ

東京の谷中にひっそりと開かれた純喫茶トルンカを舞台にした3つの短編集。
トルンカのマスターとその娘 高校生の立花雫、アルバイトの大学生奥山修一たちの、心温まる物語。

日曜日のバレリーナ
年末のある日、トルンカに来店した 雪村千夏は、初対面のはずの修一に「やっと会えた」と手を握った。

話を聞くと「二人は前世、フランス革命時期のパリで恋人同士だった」という。
奇妙な話に修一は怯んだが、面白がった雫は二人をくっつけようとする。

やがて一途な千夏に惹かれていった修一は彼女に告白するが、彼女は「嘘をついていた」といい、衝撃的な告白をする。

再会の街
三十年ほど前、沼田弘之は今のトルンカの場所にあった喫茶店の常連だった。

当時は早苗という女性と一緒に生活していたが、手がけた貿易業で成功してから早苗を重荷と感じるようになり分かれてしまった。その後資産家の女性と結婚したが間もなく関係は破綻し、仕事も右なくいかなくなりアルコール依存症へと転落していった。

その後、沼田は早苗の消息を調べたが、彼女は一人娘を残して病死したと知る。

沼田はかつて早苗と過ごした谷中を訪れ、トルンカで彼女の娘である絢子と知り合う。沼田は早苗との関係を明かさないまま、絢子と親しくなっていった。

恋の雫
雫には6歳年上の菫という姉がいた。
菫は17歳の時に病気で亡くなっていて、今年の命日には7回忌が行われることになっていた。

雫は偶然、姉のかつての恋人だった荻野を見かけた。
当時高校生だった荻野は姉の病気が発覚する前に振られていたが、彼女の葬式では棺に縋り付いて号泣していた。

荻野は大学に通うため東京を離れていたが、就職して戻ってきたという。
再びトルンカに通うようになった荻野に雫は恋心を覚えた。

雫は、荻野が自分を菫の妹としてしか見てくれないことを悲しみ、彼の気を惹くため菫の服を着たり髪形を変えたりしていた。

そんな雫を見た幼馴染の浩太は「雫のまんまで勝負しろ」と苛立ちをみせた。

感想・考察

派手な展開があるわけではないが、丁寧な心情描写に引き込まれていく。
常連を相手にした下町の純喫茶の緩い居心地の良さが伝わってくる。

家族関係に苦しんだ千夏が、同じく父との確執を抱えた修一を救い救われる。
恋人を捨てた過去を悔やむ沼田を、その娘が苦しみから解放する。
死んだ姉から離れられない雫を、幼馴染が必死に守る。

不器用で不完全な人間同士がお互いの人生に影響を与えあっていくのが、温かくて心地よいと感じる。

ちなみに続編の『純喫茶トルンカ しあわせの香』で、絢子の「格言コレクタ」だとか、浩太の「菫との約束」といった伏線がきれいに回収されている。
本作を読んで気に入った人には、ぜひ続編も読んでもらいたい。

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