100回泣くこと
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あらすじ
地元から離れ会社勤めをしている藤井に、実家の母から電話が来た。彼が浪人生の頃に図書館で拾った犬「ブック」の体調が悪いと言う。
「ブックは藤井のバイクの音が好きだった」という話を聞いていた恋人の佳美は、藤井にバイクで実家に戻ることを提案する。
4年ほど放置していたバイクは錆び付きボロボロだったが、藤井は丁寧に修復していった。
牛丼を差し入れ、キャブレターの分解整備を手伝う佳美に、藤井はプロポーズした。
二人は1年後に結婚することを約束し、「結婚の練習」として同棲を始める。
バイクの起動に成功し、バイクに乗って実家に戻った。ブックの体調は悪かったが、藤井の顔を見てから徐々に回復していった。
バイクを直し、ブックが回復し、二人の生活が始まる。
幸せの連鎖を感じる藤井だった。
だが同棲を始めて数ヶ月後して、佳美が体調を崩すことが多くなった。佳美は実家に戻りかかりつけの病院で検査をし、子宮がんの恐れがあると診断された。
仕事の忙しさがピークを迎えていた藤井だが、佳美のため自分にできることをしようと決意した。
感想・考察
一緒に牛丼を食べキャブレターの修理をしていたら、プロポーズしたくなる気分は分かる。
何気ない幸せを一緒に感じられる人は貴重だし大切だと思う。
そしてその何気ない幸せは永続するものではない。
佳美は「私たちは世界のいろんな思念を継いでいる」という。
お互いが影響を与えあって混ざり、世界には人の数だけの物語が流れていく。
自分も誰かの物語を継いでいるし、自分の物語も誰かに影響を当てえていくと思うと、永続しないことの悲しさが少しだけ慰められるのかもしれない。