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さいはての彼女

さいはての彼女

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あらすじ

忙しい日常に凝り固まった心をほどく。4つの短編小説集。

  • さいはての彼女

通販会社を立ち上げ成功した鈴木涼香は若き女社長として活躍していた。だが仕事に没頭するあまり「涼香がコワい」という恋人に逃げられ、長年一緒に取り組んできた側近スタッフも退職していった。

涼香は気晴らしのため沖縄の高級ホテルへの旅行を計画し、退職する秘書へ最後の仕事として旅行の手配を指示したが、秘書が手配したのは北海道の女満別行きのチケットだった。

期待していたリッチな旅行との落差に苛立つ涼香の前に、華奢な体でハーレーダビッドソンを乗りこなす佐々木ナギが現れタンデムを誘う。

ナギはハーレーの部品を集め好みの車体を作り上げるカスタムビルダーで、ハーレー乗りたちに慕われていた。ナギ自身も「サイハテ」と名付けたカスタムバイクで日本中をツーリングしているという。

予定していたリッチな旅はなくなったが、回転ずしを食べ、クーラーもない宿に泊まる経験は涼香の凝り固まった心を溶かした。

  • 旅をあきらめた友と、その母への手紙

浜口喜美は、大手広告代理店で若くして課長職にまでこぎつけたが、恋人との別れを期に人生設計が狂い始め、やがて退職を余儀なくされた。

無職でささくれ立っているころ、学生時代の友人である長良妙子と連絡を取るようになる。長良は浜口に「もっと人生を足掻こう」と言った。

数か月ごとに長良と一緒に行く旅行が励みとなり、浜口は徐々に生活を取り戻していく。

ある時、予定していた旅行の直前に長良の母親が体調を崩し、浜口は一人旅に向かった。
伊豆の高級ホテルで浜口は「しばらく旅行に行けそうにない」という長良とその母に手紙を書く。

  • 冬空のクレーン

大手建築デベロッパーに勤める陣野志保は、パワハラで部下を休職に追い込んでしまう。上司からの叱責に納得がいかない志保は「自分がいなければ業務が混乱する」と考えて長期の有休を申し出たが、彼女の不在期間中も業務は問題なく回っており、電話やメールが入ることもなかった。休職中の部下も志保の不在を聞き復帰しているという。

自信を失った志保は逃げるように北海道への旅行に訪れた。

旅先で志保は、タンチョウヅルの保護育成に取り組んでいる天羽翔一と出会う。

「魅力ある都市づくり」という大上段に構えた目的に現実感を失っていた志保だが、時間をかけタンチョウヅルの保護をしていた天羽は「どんな大それたことも、誰かがそう考えることから始まる」という。

  • 風を止めないで

最初の話「さいはての彼女」に登場した ナギ の母親の話。

大手広告代理店の桐生という男性がナギの家を訪れ、ハーレーの広告企画にナギが参加して欲しいという。

ナギが不在だったため彼女の母親が応対し、最初は桐生の申し出を断った。だがナギが働くバイク整備工場でハーレー好き同士の間に流れる空気に触れるうち、事故で亡くなったナギの父 タオのことを思いだす。

感想

原田マハさんの作品には、いつも感動させられる。
とくに「旅」や「手紙」をモチーフにした話にはいつも泣かされてしまう。

仕事や日常生活に疲れてくると、気づかぬうちに視界が狭くなる。
そんなときに旅に出て、今までと違う人や風景と出会うことが、凝り固まった心を緩めてくれるのかもしれない。

忙しくて切羽詰まってくると「旅行なんて行ってる暇はない」となりがちだが、短時間でも日常を離れて、いつもと違う人や景色に触れることが、思った以上に大切なのかもしれない。

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