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横浜殺人事件

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あらすじ

フリーのルポライター浅見光彦が横浜を訪れる。

浅見は横浜のローカルテレビ局を取材し、ワイドショーの撮影現場を見学した。

その日は、横浜山下公園にある「赤いくつはいていた女の子像」をテーマにしていて、番組リポーターが「赤い靴をはいていた女の子はどこにいったのか?」を街の人に聞いて回るという企画だった。
だが、そのインタビューをしたリポーターが撮影時刻になっても現れず、代役を立てて乗り切った。その後、番組関係者はレポーターの家を訪れ、彼女が殺されているのを発見した。

山下公園向かいのホテルに宿泊していた浅見は、翌朝のテレビニュースで、前日姿を現さなかったレポーターが殺されていたことを知る。

レポーターが殺された日、金沢八景で男の変死事件があった。
とある企業の真面目な総務課長が小さな山の上で服毒死していた。警察は会社でのトラブルを苦にした自殺だと判断したが、親族は自殺のはずはないと訴えていた。

変死事件で亡くなった男も、前日に浅見と同じホテルに宿泊していた。関係者から話を聞いた浅見は、彼の部屋に大きな輪ゴムのようなものが部屋に残されていたと聞く。

浅見は「赤いくつをはいていた女の子」と「青い目をした人形」が対になっていることを感じ取り、全く別に起こったように見える二つの事件は、やがて重なっていった。

感想

上手くまとまったミステリだが、一番良かったのは、昭和末期の横浜の描写だ。個人的に横浜が大好きなので。

ちょうどその頃から始まった「みなとみらい」の開発で、横浜にキレイな風景が増えた。でも例えば赤レンガ倉庫の再利用とか、ただ新しいだけでなく、歴史あるものの良さを残しながら融合させていこうという姿勢がみえる。

そこには「ゆっくり変わっていくもの」と「急速な変化」のすり合わせがある。


本書の 中華街から元町、山手あたりの描写を見ると、30年以上前の話にしては、それほど変わってないと感じる。

一方で個人の活動様式は大きく変わっている。インターネットとスマホのようなモバイルデバイスの登場が分水嶺なのだろう。
この頃の情報収集をみると、ネット検索になれた私たちにはまどろっこしく感じられる。昨今では電話のすれ違いがドラマになることはほぼない。情報との付き合い方はもはや別世界のようだ。

物理的な制限のある「箱」の方は、直線的にしか変わらないが、制約の少ない「中身」の方には指数関数的な起こっているということなのだろう。
外側と内側のズレが歪みを生まないよう、うまく融合させていくことが必要なのだ。

歴史あるモノの価値を認めうまく利用しながら、新しいものを取り入れ続けていく「横浜」が、一つのモデルケースとなるのかもしれない。

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