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アムステルダム運河殺人事件

アムステルダム運河殺人事件

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あらすじ

ヨーロッパを舞台にした二つの中編ミステリ。

  • アムステルダム運河殺人事件

オランダ、アムステルダムの運河でバラバラ死体の入ったジェラルミンケースが発見された。

首、脚、手首が切断されていて身元の判明に時間がかかったが、着衣などから隣国ベルギーのブリュッセルに駐在する日本人の商社駐在員 坂崎であると判明する。

坂崎はベルギーに赴任してまだ数週間だった。

坂崎は数か月前に赴任していた雨宮と親しくなっていた。雨宮はギャンブルで会社の金を使い込み困窮していて、坂崎が大金を保有していることも知っていた。ベルギー警察が雨宮を容疑者として取り調べようとしていた矢先、高速道路での自爆事故で死亡してしまう。

ベルギー警察は、犯人は雨宮で捜査が及ぶことを怖れて自殺したのだと考え、彼の死後は捜査は実質的に打ち切られてしまった。

事件の数年後、雑誌記者である「私」は、犯人とされた雨宮と親しい人間から真相の究明を求められ、オランダ・ベルギーへ調査に向かった。

  • セント・アンドリュースの事件

会社役員の矢部開作は、顧問弁護士である庄司正雄、友人の鈴木吉蔵とともに、スコットランドの「セント・アンドリュース」でのゴルフを計画した。
セント・アンドリュースはゴルフ発祥の地といわれ、愛好家の間で聖地とされていた。

3人はそれぞれ商用の出張としてヨーロッパ各国を訪問し、途中で落ち合うことになっていた。また矢部は自分がパトロンとなっているバーのママ山宮篤子も同行させた。

4人は念願のセント・アンドリュースでゴルフをプレーしたが、矢部は商用のため一晩だけロンドンに戻る必要があった。プレー終了後、残りの3人は矢部が空港に向かう電車に乗ったのを見届け、彼は飛行機に乗ったと思っていた。

だが翌朝、セント・アンドリュースのホテル脇の断崖で転落死した矢部が発見された。

感想

収録されている2作品ともヨーロッパを舞台にしている。アムステルダム運河殺人事件の方は、実際に起こった事件を元にしているとのことだ。

本書が書かれたのは1969年とのことだが、アムステルダム市内を流れる運河や、間口の狭いアパートの急な階段など、現在とあまり変わっていないなぁと感じる。

日本が舞台となっている半世紀前の作品だと、生活様式が全く変わってしまっている。日本以外でも、例えば香港を舞台とした「13・67」などを読むと数十年間で街の風景が全く変わってしまっているのが分かる。
日本や中国では高度経済成長が生活を変えたのに対し、欧州諸国は大きな変動がなかったということなのだろうか。

現在ではオランダとベルギーの間で国境検査などはなく、パスポートすら持たずに通過できる。これはEUによる統合によるものだと思っていが、本書を読むと、以前から国境はごく緩いものだったことが分かる。

EUは大いなる決意をもって統合を進めているのは間違いないが、それが実現可能だったのは「もともと緩い区別しかなかったから」なのだろう。

半世紀以上の間、少なくとも民間生活のレベルでは大きな変化なく過ごしてきたのが欧州なのかもしれない。

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