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GOTH 僕の章

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あらすじ

サイコパス気味な「僕」と、人と打ち解けられない森野夜の ホラーミステリ。
前編にあたる「GOTH 夜の章」は、森野夜の物語が中心で、後編「僕の章」はその名の通り「僕」に焦点を当てた3つの短編になっている。

  • リストカット事件 Wristcut

化学講義室の掃除を手伝っていた「僕」は、ゴミ箱に「手首の切り取られた人形」が捨てられているのを見つける。

その頃、猫などの動物から人間の乳児から成人まで、手首から先を切断し持ち去る「連続リストカット事件」が起きていた。
化学教師の篠原がその犯人だと考えた「僕」は留守中に彼の家に侵入する。「僕」は篠原宅の冷蔵庫に無数の手首を見つけ持ち去っていった。

篠原は部屋に残された痕跡から侵入者を推理し、手首を取り返し復讐することを誓った。「僕」と篠原の頭脳戦が始まる。

  • 土 Grave

佐伯は近隣住民からも信頼される善良な市民だったが「生き物を生めて殺したい」という衝動にとりつかれていた。
数年前には、近所に住む小学生の少年を、自宅の庭で生き埋めにしたが、犯行が発覚するることはなく、今また同じ衝動に苛まれていた。

ある夜、歩いている女子高生を襲い、自作の棺桶に詰めて庭の穴に生き埋めにした。生徒手帳から「森野夜」だと分かった彼女は、地中から「必ず友人がやってくる、彼は私を一人では死なせない」と言った。

手帳を無くしたことに気づいた佐伯が、彼女を拉致した場所周辺を探っていると、「僕」に声をかけられる。彼は行方不明になったクラスメートを探していた。「それにしても森野はどこに行ったのだろう」と僕はいう。

  • 声 Voice

森野夜は 北沢博子が廃病院で惨殺された事件に興味を持ち調べていた。

北沢博子と北沢夏海は仲の良い姉妹だったが、数年前から姉 博子の妹 夏海に対する態度が、なぜか冷たくなっていった。
夏海は訳も分からず戸惑っていたが、姉は殺されたことでその理由は分からないまま残されてしまった。

ある日、夏海は書店で出会った高校生男子から封筒を渡される。
封筒の中身は、姉が殺される直前に、犯人に命じられて残したカセットテープだった。
姉は最期に、他の誰でもなく夏海にメッセージを残そうとしていた。

そのテープの録音は冒頭部分だけで、続きはまた別のテープにあるという。
夏海が、高校のテープを渡してきた学生を探していると、その男が女子生徒と一緒に歩いていた。
その高校に通っている中学時代の知り合いから男女の情報を聞く。女子は森山夜、男はかつての同級生で「普通のやつ」だったという。

その後、夏海の前に現れた男は2本目のカセットテープを渡す。
そこには姉のメッセージに続き、その男の声で「最後のメッセージを聞きたければ、姉が殺された病院に来い」と録音されていた。

身の危険を感じた夏海だったが、意を決して病院に向かう。

感想

前編の「夜の章」では、森野夜の抱えていた物語が解き明かされた。
本書は後編に当たる「僕の章」で「僕」に焦点が当たる。

「リストカット事件 Wristcut」は、「僕」と教師の頭脳戦が面白い、ちゃんとしたミステリだが、同時に「僕」の異常性を改めて際立たせる話だった。やっぱり「僕」はサイコパスだ。

「土 Grave」は、犯人と「僕」の猟奇性がすさまじいけれど、ラストの切なさが全部かっさらっていく。それまでのどの話とも違う決着の仕方だ。
ミステリとしての仕掛けも面白かったのだが、「僕」の名前を明かさないまま、もう一段のトリックを入れることで、ちょっとグダってしまった感もある。

「声 Voice」は、前後編通じた6作品の中で一番好きな話だ。
「僕は人を殺さなければならなかった」という告白が、1話目から仕掛けられた伏線に乗って生きてくる。それがラストに上手くつながっていく。
死んだ姉と和解した妹の姿が、森野夜も救ったエピローグも良かった。

ラストで別れた二人が「もう二度と交わらなければいい」と思う。

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